クラリオンは「CEATEC JAPAN 2012」(2012年10月2~6日、千葉市、幕張メッセ)で“フルデジタル”のスピーカー・システム「01DRIVE」を展示している。同社が言うフルデジタルとはスピーカーを駆動する入力信号に至るまでデジタルであるというもの。従来のデジタル・アンプの場合、信号線に乗って送られてきたデジタル信号をスピーカーの前でアナログ信号に変換する必要があった。
フルデジタルを実現するために六つのボイス・コイルを持つスピーカーを開発した。このボイス・コイルにはオンまたはオフの2値の信号が送られる。六つのボイス・コイルへの入力信号を工夫することで波を作る。フルデジタル・スピーカー・システムにはTrigence Semiconductorの信号処理技術を採用した(関連記事)。
フルデジタルは省電力化にも寄与する。デジタル-アナログ変換が不要な他、六つの信号線に流すのは3V未満の電圧であるため、アナログと比較して総電力量が減る。「アナログのシステムと比較して電力量は8分の1、電圧は2分の1以下で駆動する」(クラリオン)という。
展示したシステムは、車載用のAVカーナビ/スピーカー・システム「Z8/Z17F」、ポータブル・スピーカー「ZP1」、およびシーリング・ライトの電源アダプタに接続するスピーカーの三つ。前から二つは2012年12月上旬に発売する。最後の製品は参考展示である。
Z8/Z17Fでは、従来のアナログ・スピーカー用のハーネスを利用できるように工夫した。具体的には1対の信号線に電力とデジタル信号を重畳させ、スピーカーの手前のLSIで六つの信号に分けるシステムを採用した。「電力線に信号を載せる、いわばPLC(電力通信)のシステムで、LVDS(Low voltage differential signaling)を応用した」(クラリオン)という。
ポータブル・スピーカーは192mm×115mm×39mm、550gと小型の製品。Bluetoothを使ってスマートフォンと接続して、音楽を再生する。2500mAhの2次電池を持ち、背面に太陽電池パネルを持つ。フル充電状態で30時間の駆動が可能。3時間の日照を受けると1時間程度駆動するという。シーリング・ライトの電源アダプタに付ける参考展示品も、スマートフォンなどからBluetoothで音楽を送ることを想定している。