三菱化学 情報電子本部 執行役員 OPV事業推進室長の星島時太郎氏
三菱化学 情報電子本部 執行役員 OPV事業推進室長の星島時太郎氏
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 有機薄膜太陽電池で着々と変換効率を高め、2012年には11%を達成した三菱化学。ロール状の有機薄膜太陽電池も試作済みだ。同社が2008年に立ち上げた「プロジェクトPV」を率い、太陽電池事業の強化に取り組んできたのが、情報電子本部 執行役員 OPV事業推進室長の星島時太郎氏である。星島氏に、有機薄膜太陽電池の開発状況や今後の戦略を聞いた。

――有機薄膜太陽電池の開発状況と量産時期を教えてください

 現在、数cm角の小面積セルで変換効率11%を達成している。横浜にある三菱化学科学技術研究センターでは、幅が約20cmのロール状の太陽電池も試作済みである。こちらの変換効率は数%となっている。
 今後は水島事業所(岡山県)において、幅が約50cmのロール状太陽電池を生産する試作プラントを2012年度中に稼働させる計画だ。変換効率は5%程度になるだろう。試作プラントで生産したサンプルを顧客とやり取りしながら、品質を確認してもらい、量産の確証を得たい。現時点では、2015年の本格量産を目指している。

――どのような分野を狙っていますか

 我々は、結晶Si型太陽電池と勝負するつもりはない。つまり、発電コストを競うことはしない。軽量でフレキシブルといった有機薄膜太陽電池の特徴を生かして、ビルのブラインドやロール・カーテン、日よけ、外壁、さらに自動車の屋根やボンネット、ドア、ブラインドなどへ展開したい。自動車は検証に時間がかかることから、まずは建材から始めることになるだろう。
 例えば、ビルの省エネ用建材やペアガラスなどの代わりに、有機薄膜太陽電池のブラインドを使うという用途がある。ペアガラスなどの価格に比べれば、発電もできる有機薄膜太陽電池は決して高くはないだろう。重い結晶Si型は自動車の屋根だけしか搭載できないが、軽量な有機薄膜なら多くの面に搭載できる。
 なお、有機薄膜太陽電池は10年ほどで取り替えるといった使い方を想定している。

――本格量産時点の変換効率はどの程度になりそうですか

 2015年の本格量産時点の変換効率は7%くらいになりそうだ。結晶Si型などに比べて変換効率は低いが、十分売れると考えている。従来は設置が難しかったところにも使え、設置面積を増やせるといった利点が多いからだ。
 変換効率のことをよく聞かれるが、変換効率よりもフィルム上にロール・ツー・ロールで生産できることの方がよっぽど重要だ。新たな用途を開拓するのに欠かせないからだ。変換効率は後からついて来る。

――米Konarka Technologies社が倒産するなど、有機薄膜太陽電池を取り巻く環境は厳しいです

出口のないまま生産しても売れない。しかも、自らは生産だけして、他社に販売を任せるというのでは、よほど特徴がなければ売ってもらえない。自ら出口を作って、販売する必要がある。韓国メーカーの有機ELパネルの販売手法を見れば明らかだ。我々は、建材やプラスチックのビジネスを展開している。そのノウハウを生かして、生産と販売を自ら手掛けるつもりだ。

――結晶Si型や薄膜Si型を扱っている理由を教えてください