米Apple社の新型スマートフォン「iPhone 5」の販売が9月21日に始まる(関連記事)。事前の予想通りのスケジュールとなったが、部品・材料メーカーにとっては事業を計画通りに進められないリスクが残っている。タッチパネル内蔵ディスプレイとして使われる新型パネルの出荷が、当初計画より大幅に少ないのだ。部材調達のボトルネックによってiPhone 5の生産台数が減って電子部品市場に悪影響を及ぼす恐れがある。ドイツ証券の中根康夫氏とIHS iSuppliの南川明氏、IHS DisplaybankのHarry Kim氏に聞いた。韓国Samsung Electronics社との特許係争の影響に対する見方も求めた。

ドイツ証券 株式調査部 シニアアナリスト マネージング ディレクターの中根康夫氏

まずはTech-On!の人気コラム「台湾・中国 中根レポート」を連載中の中根氏に聞いた。

 「iPhone 5」の出荷台数は、小売店への引き渡し(セルイン)ベースで、米Apple社が当初に計画していたよりも少ないと見ている。部品の調達状況などからの推定では、2012年7~9月に生産して発売当初に用意する予定だったのは3000万台。同年10~12月に生産する予定だったのは4500万台である。これに対して、7~9月の生産量は1500万台弱(7月は150万、8月は400万~450万、9月は700万~800万)、10~12月は3000万台となりそうだ。

 この数字は、前機種「iPhone 4S」の当初の販売台数である約1500万台と比べて少ないわけではない。しかし年率50%増といったペースで出荷を伸ばしてきたiPhoneシリーズとしては、やはり少ないというべきだ。iPhone 5を当初用意できる台数がAppleの当初計画よりも少ないのは確かであり、この事態は部品業界へ少なからず影響を及ぼすだろう。