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【麻倉怜士IFA報告】12音解析が支える、ソニーの「Music Unlimited」

麻倉 怜士=評論家、日本画質学会副会長
2012/09/09 15:36
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タブレットで表示されたMusic Unlimitedの画面
タブレットで表示されたMusic Unlimitedの画面
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 ソニーのクラウド・ベースの定額制音楽配信サービス「Music Unlimited」の日本での利用が、2012年7月から始まった。これまで展開していたのは米国、カナダ、イギリス、アイルランド、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ベルギー、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド。これに日本が加わった。欧州ではすでに米Sony Music Entertainment社、英EMI社、米Universal Music Group社の合計1600万曲もの楽曲に自在にアクセスできるというから驚きだ。1曲3分として4800万分。60で割って80万時間。さらに24で割って3万3333日。さらに360で割って92年。つまり1日24時間のべつまくなしに聴いても92年かかる計算だ。アカウントを持っていれば、ソニーの14種類の機器からアクセスできる。

 年代別のヒット曲、チャートのベスト100などのプレイリストが豊富に用意され、さらに、よく聴く曲に似た曲を推薦してくれる。なかでも面白いのが、ムードによる選曲だ。明るい、暗い、元気、癒し……などのカテゴリーから、勝手に選曲してくれる。ここに導入されたのが、ソニー独自の12音解析技術。これがなければ、Music Unlimitedは単に曲が多いだけの使いにくいサービスになったところだ。

 12音解析は、楽曲の1オクターブのすべての半音階の音をチェックして、その曲の感情を調べる技術だ。目的は、曲を感情ごとに分類することだ。それには4段階を経る。第1段階では、12の音ごとに、音の強弱や長さによって表れる特徴を解析する。つまり、どの音のエネルギーが強いかを測る。第2段階では、音楽の特徴を判断する。ここでは35の基本的項目を255段階に数値化する。例えば、テンポは54,スピード感は76、メジャーとマイナーの割合は180でメジャーが強い、リズム楽器の割合は120、音符の多さは200、ビートの揺れは57、カデンツの出現具合は167……と、各項目を数値化するのである。

 次に、この特徴データをさまざまに多重分析し、エモーショナル、ハッピー、ヒーリング……という複数種類のムードと、ジャンル別の特徴(この曲はバラードか、アコースティックか、ボーカルか……など)に集約する。一例を挙げると、アコースティック系か打ち込み系かの判断には、ビートの揺れを指標に用いる。打ち込み系はビートが完全に一定であり、アコースティック系は感情の起伏と共にビートに微妙な揺れがある。「暗い」という感情は「ゆっくりとしたテンポ」「マイナーなコードが多い」……といった要素から判断する。最後にチャンネル化だ。こうして作り上げた分類データから、最適なチャンネルのプレイリストを自動作成するのである。

 12音解析では、曲同士の類似性も算出する。そこで、アーティストやジャンルにとらわれず、曲調が似ている曲を再生中に検索する。「そういえば、この曲が流行ったころにあの曲も聴いたなぁ」という連想で、違う曲が出てくる。

 筆者からの提案もしておこう。大学で和声を研究している筆者からすると、カデンツの出現具合だけでなく、そのカデンツが持つ進行の感情を測定してほしい。例えば三度進行でも短三度のCEmと長三度のCEは、まったく音の感覚が違う。特にCEは非常に感情的だから、そのようなエモーションを基にジャンルを作れば、Music Unlimitedはさらに楽しくなるだろう。つまりC Am F G7の進行曲でプレイリストを作ってほしい。

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