オリジナルのフルHD映像
オリジナルのフルHD映像
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フルHDからアップコンバートしたICC・4Kの映像
フルHDからアップコンバートしたICC・4Kの映像
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 これほどの立体感をプレーンな2次元の映像で、それも裸眼3Dなどの特別な仕掛けなしに体験したのは、2011年のNHK技研公開でNHKとシャープが共同開発したスーパーハイビジョン対応85型液晶ディスプレイを見た時以来だ。この時、スーパーハイビジョン画像は2D表示専用にもかかわらず、実に自然な立体感を表現していた。例えば、東京の高層ビル群を空撮した映像。ビルがニョキニョキと立って、まるでこちらに向かってくるように感じた。その時以来の感動がICC・4Kにはあった。

 凄いのは、単に奥行きが出るだけでなく、その一つひとつのオブジェクトに丸みが付いていることだ。分かりやすいのが、手前に出てくる枝だ。書き割りのようなのっぺりではなく、ちゃんと立体的な丸みが分かるのである。猿も丸い。いかにも動物の持っているラウンド感だ。これも、オリジナルのフルHD画像ではさっぱり分からない。すべて平面だ。これは奥行き表現と合わせ、「ナチュラルな3D画像」といっても決して大袈裟ではない。

 筆者は以前からこのようなナチュラルな3Dを「三重立体効果」と名付け、自著(アスキー新書「素晴らしき3Dの世界」)でも紹介している。(1)奥行きがあり、(2)オブジェクト全体(例えば人物)に立体感、(3)オブジェクトのディテール(腕など)にも立体感---を称して「三重立体効果」とした。この現象に最初に気付いたのは、20th Century Foxの「アイス・エイジ」だった。マンモスの鼻やキバがしっかりと丸く描かれ、画面には奥行きもあり、画面に登場するものすべてが立体であった。ディズニー作品では、2008年の犬の自分探し物語の映画「ボルト」が、とてもきれいな三重立体効果を発揮していたが、2009年の「塔の上のラプンツェル」は、その質がさらに向上した。CGだから、現実感というよりファンタジー感がメインだが、ありとあらゆるシーンに微細な立体感が与えられ、作品世界の中に実に自然に入っていける3Dなのである。これらは3Dとして作られたコンテンツの話だが、ICC・4Kでは、2DのフルHDからの2Dの4K×2Kへのアップコンバートなのに「三重立体効果」を感じるのである。

 さらに、全面的にフォーカス感が圧倒的に向上している。木は白樺だが、その表面の模様、木肌のキメ、猿の毛並みの一本一本が、オリジナルのフルHD画像より、はるかに情報量が多く、見えてくる。ICC・4Kのアップコンバート画像を見て、次にオリジナルのフルHD画像に視線を移すと、それは「ハイビジョンとSDの差」以上の違いといっても、過言ではない。

 総合すると、今回のICC・4Kは、2011年のIFAやCEATEC、2012年のCESのデモに比べて、格段に進化した。圧倒的ともいえる、臨場感と精細感で迫る、全く新しい映像である。これまでの超解像技術は“画素を細かくすればいい”という感じだったが、筆者はかねがね、“もっと感情に訴えかけるような映像を見たい”と言ってきた。今回のICC・4Kでは、それが叶った気がする。その技術的な背景を次回に述べよう。