2011年10月4~8日に「CEATEC JAPAN 2011」が開催された。
東日本大震災の影響によって定置用蓄電システムの出展が相次ぎ、さながらエネルギー関連の展示会の様相を呈していた。
エレクトロニクス業界の主役を務めてきたテレビやモバイル分野をはじめ、
新興のヘルスケア分野でも新たな方向性が見て取れた。(CEATEC取材班)

 「エネルギー関連の展示会みたいだった」─。

 「CEATEC JAPAN 2011」が、2011年10月4~8日に千葉県・幕張メッセで17万人以上の来場者を集めて開催された。今回は、同年3月11日に起きた東日本大震災後 の原子力発電所の事故をめぐる一連の電力危機の影響を大きく受ける形となった。特に、電力不足を解消する定置用蓄電システムなどエネルギー関連製品の出展 が相次ぎ、この分野の需要が日本市場において急激に高まっていることがひしひしと伝わる内容だった。

 実際、数多くの企業が、東日本大震災後に急遽開発したエネルギー関連の製品を出品した。このうち、停電などの非常時にも電力の供給が可能な定置用蓄電シ ステムの展示が各社から続いた。大手電機メーカーではNECやシャープ、ソニー、東芝、パナソニック、日立製作所が展示ブースに大きなスペースを割き、蓄 電システムを披露していた(図1)。

図1 東日本大震災の影響を大きく受けたCEATEC
今回のCEATECでは、東日本大震災後の電力不足の影響を受けて、非常時に利用可能な蓄電システムの展示が、大手電機メーカーや携帯電話事業者のブースの目立つ部分を占めた。

 さらに、来場者を驚かせたのは携帯電話事業者であるNTTドコモが家庭用蓄電システムを展示し、販売する意向を明らかにしたこと。電機メーカーだけでなく、サービス事業者も巻き込んで蓄電システムが本格普及に向けて動きだしていることを印象付けた。

すぐには普及せず

 ただし、各社が披露した定置用蓄電システムはすぐに普及する状況にはない。定置用蓄電システムに用いる大容量のLiイオン2次電池を大量生産できるメーカーは少なく、数量の確保と価格の低減を実現できていないからだ。

 大量生産している民生機器向けLiイオン2次電池を利用すればよいとの意見もあるが、実現にはもう少し時間がかかりそうだ。現状のLiイオン2次電池を 採用するには、安全性や寿命を担保するシステムの開発などが必要になる。そのため、東芝は家庭向けにすぐ導入できる鉛蓄電池を用いた蓄電システムを市場投 入している。シャープも鉛蓄電池を用いた蓄電システムを販売する計画である。

 それでも2012年半ばごろには、Liイオン2次電池を用いた蓄電システムの販売を本格化させるメーカーが登場しそうだ。NECや東芝は、生産量を拡大 している電気自動車(EV)向けのセルの流用を狙っている。この他、パナソニックやソニーは民生機器向けの量産ラインを利用するが、材料系をより安全で高 寿命なものに変更したセルを利用するとみられる。どこまで価格を下げられるかが普及のカギを握りそうだ。