2012年8月29~31日に開催された韓国最大のディスプレイ技術の国際会議「IMID」のコンファレンスは、6会場で並行して行われた。合計63の口頭発表セッションと、2回に分けられたポスター・セッションから構成されていた。すべての会場が3階にまとまっていたので、会場間の移動は非常にスムーズだった。展示会場も同じ建物の1階で開催されていたため、空いた時間にさっと展示会場を見て回ることもできた。

 六つの会場のうち最も大きいメイン会場は、3日間すべて有機EL関連の発表で占められた。筆者はずっとこの会場で発表を聞いていた。全席に長机がゆったりと配置され、大型スクリーンが3枚並ぶ会場は、どこで発表を聞いても快適だった。机の上にパソコンを開いて、予稿集を見ながら発表を聞けるのが嬉しい。一つ注文をつけるとすると、CDドライブの無いパソコンやタブレット端末を持参している参加者も多いので、USBメモリでの予稿集配布を是非お願いしたい。筆者は受付のスタッフに頼んでCDに収められた予稿集のデータを個人のUSBメモリにコピーしてもらったが、同じように苦労した人も多かったと思う。

 今回のレポートでは、2日目まで参加した時点での感想と、筆者が注目した発表を紹介する。

 まず、有機EL(OLED)のセッションが大いに盛り上がっていた。他の会場よりかなり大きなメイン会場だが、特に材料関係や光取り出し技術関係の発表ではほぼ満席に近い状態で、質問も多くて予定の時間をオーバーすることが多かった。残念なのは、これだけ盛り上がっている有機ELのセッションで、日本企業や日本の大学からの発表が少なかったことである。

有機ELセッションの国・地域別の発表数
共同発表は筆頭者または本社の国でカウントした。
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 表1に有機ELセッションの国・地域別の発表数をまとめた。全38件の発表のうち、韓国20件、米国5件、台湾4件、ドイツ4件、日本3件、英国1件、オランダ1件、という分布になった。もちろん地元韓国の発表数が多いのは当然ではあるが、それを差し引いても日本からの発表が非常に少ない。この分布がFPD産業における今の日本の立場をよく表していると思う。今度の発展が最も期待できるFPD分野として有機EL産業の振興を国策として進める韓国と、それにうまくついていって堅実なビジネスをしようという欧米や台湾の積極的な姿勢に比べると、日本はプレイヤー自体の数が少なく寂しい限りである。

 有機ELではアクティブ・マトリクス型パネルの開発に関する発表は無かったが、塗布型やフレキシブル化に関する発表が多かった。