電力やガスなどエネルギー関連事業において、通信機能を組み込んで検針値を遠隔監視できる「スマートメーター」への関心が高まっている。エネルギー利用状況の“見える化”や、検針データを使ったコンサルティング・サービス、将来は宅内機器の制御など、さまざまな応用の可能性が期待されているからだ。
ところで、このスマートメーターは、実際にどのような部品で構成されているのか。また、どんなメーカーが主要部品を供給しているのか─―。スマートフォンなど携帯機器の内部と比較して、メーター内部の状況を確認する機会はあまり無い。そこで、これらの点を明らかにするべく、米国で“スマートメーター”として利用されている機器を入手し、内部を分析してみることにした。
分析は、機器の分解調査を数多く手掛けるフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの協力を得て進めた注1)。今回はまず、有線通信機能を備えるスマートメーターを中心に、利用している部品のメーカー名や部材コストなどを解析する。
注1) 今回分析したスマートメーターは、フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズが購入したものである。分析の詳細は、同社の「スマートメーター分解レポート」(2012年5月刊など)に詳しい。
Ethernetの通信機能を備える
今回内部を分析したのは、米国のメーター関連メーカーであるItron社の「Sentinel SS5S2L」(以下、Sentinel)と、米General Electric社の「KV2」である。いずれも120~480Vに対応した電力量計で、Ethernetもしくは電話線ケーブルによる通信機能を備える(表1)。この他に参考として、通信機能を備えていない、スイスLandis+Gyr社の「AXS4」の内部状況も分析し、表に記載した。
これら三つのメーターに共通するのは、いずれも電力量計であるということと、液晶パネルを使って検針データを表示できることである。ただし、通信機能を備える2機種が、内部に3枚の基板を使っているのに対して、通信機能を保有しないAXS4は、1枚の基板に主要部品を集約していた。またAXS4は、部材コストの推定値が最も低い。他の2機種は、通信機能を組み込むことで、部材コストが増加していることが見て取れた。
3枚の基板を活用
具体的に内部構造を見ていこう。まずSentinelの内部にある基板に実装されているマイクロコントローラ(マイコン)などを分析する。
Sentinelは他のスマートメーターと同様に、円筒形の形状をしており、一見すると大きめのパイナップル缶のようである。外装のプラスチック・ケースを外し、下部の補強部材を取り除くと、各種の個別部品を実装した基板が2枚、顔を出す(図1)。実際には奥にもう1枚格納されているため、計3枚で構成されている。このうち1枚が、Ethernetなど通信関連処理を扱う基板で、もう一枚が主要なマイコンが実装されている基板である。基板はいずれも樹脂製である。
通信処理を担う基板で最も目立つのが、Ethernetの信号とシリアル信号の変換を行う米Lantronix社の超小型デバイス・サーバー「XPort」だ(図2)。XPortの内部にはシリアル/Ethernetのデータ変換処理やネットワーク制御処理を実行できる回路が組み込まれており、Ethernetケーブルで信号を伝送できる。周辺にあるルネサス エレクトロニクス製のマイコンなどが、通信関連処理を実行しているとみられる。