東芝の2012年度第1四半期決算
東芝の2012年度第1四半期決算
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 東芝は2012年7月31日、2012年度第1四半期(2012年4~6月)の決算を発表した(ニュース・リリース決算説明資料)。売上高は対前年同期比4.3%減の1兆2689億円、営業利益は同74億円増の115億円、純損益は同126億円減の121億円の赤字となった。

 火力発電を中心としたエネルギー関連事業の受注拡大などによって、社会インフラ部門が増収となったものの、デジタルプロダクツ、電子デバイス、家庭電器の各部門が減収となった。また、中小型液晶ディスプレイ事業の譲渡による減収分が300億円強、円高による減収分が250億円程度あるという。一方、営業損益ではデジタルプロダクツ、家庭電器が減益だったものの、電子デバイスと社会インフラは増益だった。円高による減益分は100億円程度だった。純損益は、構造改革費用などの営業外費用の増加によって減益となった。

 部門別に見ると、デジタルプロダクツ部門は国内における液晶テレビ需要の大幅な減少に加え、北米におけるパソコン需要の減少によって、売上高は対前年同期比17%減の3399億円、営業損益は同30億円減の36億円の赤字となった。「まだまだ国内のテレビ需要は非常に弱い」(東芝 代表執行役専務の久保誠氏)とする。液晶テレビ事業は、最も不調だった2011年度第4四半期(2012年1~3月)に比べて「赤字幅が半分以下に改善したものの、まだ赤字が残っている状況」(同氏)である。これに加えて円高の影響もあり、減益となった。

 電子デバイス部門は、HDDを中心としたストレージが好調だったものの、円高やNANDフラッシュ・メモリの売価下落によって、売上高は対前年同期比8%減の3077億円となった。一方、営業利益は同68億円増の94億円だった。NANDフラッシュ・メモリは売価下落の影響で若干の赤字となったものの、好調だったストレージは100億円を超える黒字だった。さらにシステムLSIが構造改革に伴う品種数の削減などによって、前四半期に引き続き赤字を解消できた。システムLSIとディスクリートはほぼブレークイーブンだった。

 社会インフラ部門は、全体的に好調に推移し、売上高は対前年同期比17%増の5002億円、営業損益は同116億円増の84億円の黒字だった。火力、水力発電システムを中心としたエネルギー関連事業が国内外で好調だったほか、エレベータや医用システムも海外で伸長した。営業利益も特に発電システムが好調で、第1四半期としては過去最高を達成した。

 家庭電器部門は、業務用空調やLED照明が増収だったものの、白物家電の販売減によって、売上高は対前年同期比5%減の1416億円、営業利益は同10億円減の1億円となった。

 2012年度通期の業績見通しについては、期初に発表した値から変更しなかった。売上高は6兆4000億円、営業利益は3000億円、純利益は1350億円を見込む。ただし、部門別の内訳は変わる可能性があるという。特に電子デバイス部門は、NANDフラッシュ・メモリが売価下落の影響を受けており、四日市工場では生産量を30%減産している(関連記事)。減産の効果は少しずつ出ているものの、先行きは不透明とする。これに対し、社会インフラ部門は第2四半期も引き続き好調に推移する見通しであり、全体としては期初の予想を達成できるとした。

 なお、NANDフラッシュ・メモリの生産調整に関しては、「採算の悪いリテール市場向けの24nm世代品を中心に絞り込みたいと考えている」(久保氏)と述べた。その結果、減産による固定費負担の増加を考慮しても、メモリの営業損益は第1四半期の若干の赤字から2012年度第2四半期(2012年7~9月)には最大で150億円ほど改善が見込めるという。

 久保氏によると、ビッグデータの活用を背景にストレージ(NANDフラッシュ・メモリ)の需要は増えると予想されるが、そうした変化は急には起きない。それまでの間、NANDフラッシュ・メモリを牽引する最大のアプリケーションはスマートフォン、タブレット端末、Ultrabookであり、特にスマートフォンは「米Apple社の新機種がどれほど売れるかによって大きく左右される」(同氏)という。同社のNANDフラッシュ・メモリ事業のうち、OEM比率は60%強であり、特にApple社による影響が大きい。「特定の1社に左右されないように他のOEM顧客を増やそうとしているが、まだ道半ば」(同氏)とする。

 なお、ディスクリートとシステムLSIを合わせた営業損益は、第1四半期のブレークイーブンから第2四半期には50億円程度の黒字に改善する可能性があるという。特に「ディスクリートが期待できる」(久保氏)という。ストレージは100億円を超える営業黒字を第2四半期も継続できる見通しである。