2011年に開催された「MEDTEC JAPAN」や「メディカルテクノロジー EXPO」、「国際モダンホスピタルショウ」などの展示会に初出展を果たし、ヘルスケア事業に注力していく方針を強く打ち出した村田製作所。2012年4月に開催されたMEDTEC JAPANでも最新の取り組みをアピールしたばかり(関連記事)。同社の今後の方向性などについて、家木氏に聞いた。

(聞き手は小谷 卓也)


――この1年間、さまざまな展示会を通してヘルスケア関連の取り組みをアピールしてきたことで、何か変化したことはありますか。

家木氏
いえき・ひではる
1973年に京都大学 工学部 電子工学科を卒業。1994年11月に金沢村田製作所高周波商品統括部 高周波 SAW商品部長、2003年6月に村田製作所 第4コンポーネント事業部長、
2005年2月に同社 デバイス事業本部長などを経て、2007年6月に取締役 常務執行役員(現職)。2008年7月に技術・事業開発本部長、2009年7月に次世代技術研究所長を兼務。
(写真:宮田 昌彦)

 我々に声を掛けていただける企業の幅が広がりました。これまでに付き合いがあるエレクトロニクス関連の企業だけではなく、医療機器やヘルスケア事業に取り組んでいる企業、サービスを手掛けている企業など、さまざまです。

 ヘルスケア関係の取り組みに力を入れたいという地方公共団体からの問い合わせも増えてきました。最近では、政府がヘルスケアなどのライフイノベーションの分野に注力し始めているので、その関係もあるのだと思います。

 一方、社内的には 2011年夏に技術・事業開発本部の中に「ヘルスケア事業推進プロジェクト」を新設しました。事業部横断で横串を刺した組織です。ヘルスケア事業に対する会社のスタンスの統一を図ると同時に、新規顧客の開拓や事業企画、商品企画、マーケティングなどを担っています。

――ご指摘のあった政府の取り組みも含め、ヘルスケア市場の創出に向けた業界全体のムーブメントは感じていますか。

 企業単独では取り組めないことも多いので、政府による産業育成のような動きの存在は助かります。

 一方で、まだまだ電子部品メーカーの多くは、ヘルスケア分野に本腰を入れているとは言えないのかもしれません。そのためか、「ぜひ御社(村田製作所)には積極的に進めてもらいたい」といったエールをもらうこともあります。

 我々も以前は、この分野に積極的ではなかったので、問い合わせをいただく企業から「本当に真剣にやるのですか?」と聞かれることもあります。もちろん今は、「積極的に取り組みます」と答えていますよ。

――最近では、ソニーがメディカル分野を将来のコア事業の一つにする方針を掲げるなど、エレクトロニクス関連のセット・メーカーの動きが活発になっています。こうした動きが、多くの電子部品メーカーの戦略にも波及してくる可能性はありますか。

 あると思います。確かに、エレクトロニクス関連のセット・メーカーの戦略を聞くと、ほとんどの企業が「エネルギー」と「ヘルスケア」という二つの分野を挙げます。必ずしも、こうしたセット・メーカーの動きが「マスト」というわけではないのですが、電子部品メーカーにとっては、その方が動きが速いかもしれません。

――ヘルスケア事業を推進していくに当たり、どのような点を課題と感じていますか。