図1 キヤノン初のミラーレス・カメラ「EOS M」の“コミュニケーションパートナー”を務める新垣結衣さんと妻夫木聡さん
図1 キヤノン初のミラーレス・カメラ「EOS M」の“コミュニケーションパートナー”を務める新垣結衣さんと妻夫木聡さん
[画像のクリックで拡大表示]

 キヤノンは2012年7月23日、ミラーレス・カメラ市場への参入を表明し、第1弾製品として「EOS M」を発表した(図1)。2012年9月中旬に販売を開始する。生産台数は、月産10万台を予定する( Tech-On! 関連記事1 Tech-Off! 関連記事)。

 キヤノンは、レンズ交換式デジタル・カメラの国内市場で「34.4%」(同社)を握る最大手。ミラーレス・カメラを巡っては、2008年10月にパナソニックが製品を投入したのをきっかけにオリンパスやリコー、ソニーなどが続いた( Tech-On! 関連記事2)。2011年10月にはニコンも参入しており、キヤノンは大手カメラ・メーカーで最後発となる(図2)。

 「カメラにとって高画質と小型軽量は相反するもので開発に時間が掛かった。何とか両立を達成できたことでEOS Mを発表できた」――。キヤノン 常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部長の真栄田雅也氏は同日開催した記者発表会で開発を振り返った。キヤノンマーケティングジャパン専務執行役員 イメージングシステムカンパニープレジデントの佐々木統氏は「最後発となったが、まだまだ追いつけると思う」と自信を口にした。

価格は7万円前後から


 EOS Mは、20~30代のカメラ初心者向け機、または一眼レフ・カメラ・ユーザーのサブ機として位置付ける(図3)。外形寸法は108.6mm×66.5mm×32.3mmで、本体のみの質量は約262g(図4)。ストロボや電子式ビュー・ファインダー(EVF)は内蔵していない。

 価格はオープン。想定実売価格は、本体単体モデルが7万円前後、単焦点のパンケーキ・レンズが付属する「EF-M22 STM レンズキット」が8万円前後、標準ズーム・レンズが付属する「EF-M18-55 IS STM レンズキット」が8万5000円前後、レンズ2本とマウント・アダプタ、フラッシュなどが付属する「ダブルレンズキット」が11万円前後の見込み。

位相差AF用センサを一体化


 撮像素子はAPS-Cサイズで有効約1800万画素のCMOSイメージ・センサで、画像処理エンジンは「DIGIC 5」を採用する。いずれも、同社が2012年6月に発売した一眼レフ・カメラ「EOS Kiss X6i」と同一品である。

 CMOSイメージ・センサの中央部には、通常は撮影に使う画素の一部を測距用に割り当てる位相差AF用センサを埋め込んである(図5)。まず、位相差AFセンサである程度のピントを合わせ、最終的なピント合わせにはより高精度とされるコントラストAFを使用する。これにより、ミラーレス・カメラで一般的なコントラストAFのみの方式に比べてAFを高速にできるとする。同社は、この方式をコントラストAFと位相差AFを組み合わせた「ハイブリッドCMOS AF」と呼ぶ。この他、「動画サーボAF」も搭載しており、動く被写体にピントを合わせ続けることができるという。

既存の交換レンズを使うためのアダプタを用意


 交換レンズ接続規格(マウント)は新開発の「EF-M」マウントを採用したフランジ・バックは18mm。マウント外径は58mm。なお、同社の既存の一眼レフ・カメラ向けの「EFマウント」は、フランジ・バックが44mmでマウント外形が65mmである。

 EF-Mマウント向けの交換レンズは、本体の発売に合わせて2本を用意する。ズーム・レンズ「EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM」と、単焦点レンズ「EF-M 22mm F2 STM」である。さらに、EOS MでEFマウント向けの交換レンズ60種類以上が使用できるようになるマウント・アダプタ「EF-EOS M」(1万2600円)も同時に発売する(図6)。

 小型化の面で大きく寄与しているのが、背面にタッチパネル式の液晶ディスプレイを採用した点である。一般的な一眼レフ・カメラやミラーレス・カメラの背面には、多くの操作ボタンが配置されているが、EOS Mではタッチパネルによる操作を増やしてボタンを最小限にした(図7、8)。マルチタッチにも対応しており、撮影した画像の拡大や縮小をスマートフォンのように2本の指でできる。タッチパネルは、静電容量方式の品種である。

図2 顕著な市場成長を示すミラーレス・カメラ
図2 顕著な市場成長を示すミラーレス・カメラ
[画像のクリックで拡大表示]
図3 キヤノンは、EOS Mをエントリー機と位置付ける
図3 キヤノンは、EOS Mをエントリー機と位置付ける
[画像のクリックで拡大表示]
図4 外形寸法は108.6mm×66.5mm×32.3mm
図4 外形寸法は108.6mm×66.5mm×32.3mm
[画像のクリックで拡大表示]
図5 CMOSイメージ・センサの中央部に位相差AF用センサを配置
図5 CMOSイメージ・センサの中央部に位相差AF用センサを配置
[画像のクリックで拡大表示]
図6 マウント・アダプタ「EF-EOS M」を介して「EF28mm F2.8 IS USM」を取り付けた
図6 マウント・アダプタ「EF-EOS M」を介して「EF28mm F2.8 IS USM」を取り付けた
[画像のクリックで拡大表示]
図7 操作ボタンを最小限に抑えた
図7 操作ボタンを最小限に抑えた
[画像のクリックで拡大表示]
図8 分解展示も披露した
図8 分解展示も披露した
[画像のクリックで拡大表示]