要は、日本には原発災害に対しての現実的な危機管理体制はなかったといえる。そのため、東電、原子力安全・保安院、首相官邸のいずれもが泥縄的な対応に終始し、指揮命令系統が混乱した。専門家からの助言を得ていた3者は私と同様、津波襲来直後にはチェルノブイリ原発事故並みの災害になることを十分に認識していたはずだ。

 しかし何の備えもない東電や原子力安全・保安院、首相官邸は、蜂の巣を突いたような大混乱に陥った。福島第一原発事故はすべての分野にわたって、現実的な危機管理体制が整っていない日本のシステムの危うさを顕在化させたのである。