既報の通り米Broadcom社は、高速無線LAN規格「IEEE802.11ac」に対応したLSI「BCM4708x」「StrataGX BCM5301x」を発表した。二つのCPUコア、GビットEthernetスイッチ論理層回路、同物理層回路、USB3.0、トラフィック・アクセラレータなどを一つにチップに「世界で初めて」(同社)集積したもの(図1)。設計ルールは40nm。2012年後半にサンプル出荷が開始される。
ここでは、Broadcom社のMobile Wireless Connectivity部門Vice PresidentのPaul Patel氏や説明員への質問結果を紹介する。
―― Broadcom社の11ac対応LSIを扱うEMS/ODM企業やモジュール企業は、どのくらいに増えたのか。
他社以上に多くの仲間を得られた。ざっと以下の会社がある。
●EMS/ODM企業――――――――――――――――
台湾Alpha Networks(明泰)社
台湾Compal(仁寶)社系の台湾Arcadyan(智易)社
台湾Cybertan(建漢)社
台湾Foxconn(鴻海)社
台湾Sercomm(中磊)社
●11ac用モジュール―――――――――――――――
台湾Pegatoron(和碩)社系の台湾AzureWave Technologies社(海華)社(図3)
村田製作所
韓国Samsung Electro-mechanics社
●無線LANアクセスポイントのブランド企業――――
米Netgear社
バッファロー
台湾D-Link(友訊)社
米Belkin社
中国Tenda(騰達)社
台湾Edmax(訊舟)社
台湾Asustek(華碩)社(ノート・パソコンも発売)
―― 米Qualcomm Atheros社に先駆けてBroadcom社は11ac対応LSIの量産出荷を伸ばしているとのことだったが、サプライチェーンの下流の企業からは値段が高すぎるとの声がある。
3×3の空間多重数に対応した当社のLSIは、市販価格が200米ドル台の無線LANアクセスポイントに搭載されている。これは、当社が普及の初期に必要とされる価格を実現した一つの証だ。今後はパソコンやテレビがどんどん11ac対応LSIを組み込んでいく。
11ac対応品は2014年に、無線LAN用LSIの出荷量の過半を占めるだろう(図2)。有線LANポートを設けられないほど薄いノート・パソコンやフルHDの動画試聴が普及することが追い風だ。11acをサポートするテレビは、2013年に量産出荷されるはずだ。
―― 台湾MediaTek(聯發科)社も、Broadcom社や米Qualcomm Atheros社に近いタイミングで11ac対応LSIを投入する(MediaTek社のニュース・リリース)。価格に加えて商品ラインアップの多様さでも競わなければならないはずだが、Broadcom社は1×1の空間多重数に対応した安価な品種をまだアナウンスしていない。
もう少し待ってもらえれば明確な回答ができる。
―― 「BCM4708x」と「StrataGX BCM5301x」の間にどんな違いがあるのか?
回路もファームウエアもほぼ同じだ。ただし後者はPoE(Power over Ethernet)に対応したり、消費電力よりも速度を重視した設定がなされている。
―― 実効スループットは?
利用環境によるが、空間多重数が2×2のとき450Mビット/秒ほど、同3×3のとき840Mビット/秒ほどだ。