自律神経でストレスを客観評価
現在、広く普及している血圧計や体重計、活動量計(歩数計)の多くは生活習慣病の管理や予防に活用されているが、これら以外にも、様々な生体データが個人でも測定可能になっている。例えば、自律神経の状態を計測する心拍センサーもその一つ。交感神経と副交感神経からなる自律神経は、ストレスや疲労などによってバランスが乱れやすい。そのため、その動きを把握することで、利用者のストレス状態を客観的に評価することが可能とされる。
ヘルスケア・サービスでは、こうした生体データの計測をいかに継続して利用してもらうかが、成否のカギを握る。ほとんどの利用者はデバイスによって得られたデータをどのように判断すべきか分からない。そのため、最初の目新しさで始めても継続しないことが多く、ビジネスとして成立が難しいからだ。
個別アドバイスで動機付けを強化
ストレス解消には様々な方法があるが、適度な運動もその一つ。ところが、運動の“適度”は個人のストレス状態や体調などによっても異なる。そのため、ストレス解消のための適度な運動量を的確にアドバイスすることは難しい。逆に、ストレス度に応じた運動量を個別にアドバイスすることができれば、自律神経計測の動機付けが強化されると考えられる。
実際、技術開発も進んでいる。例えば、ユニオンツールは、体に貼るタイプで、心拍(数、周期、波形)、体表温、3軸加速度を同時に計測できるセンサー「myBeat」を、2012年3月に製品化した(図1)。これを利用すれば簡便にストレス状態と運動量を一括して評価できる。
また、心拍などの生体データから個人別のストレス状態を評価したり、さらにはストレスと運動との相関を評価したりするためには、蓄積したデータを統計処理して知見を得るデータ・マイニングの手法が有効である。例えば、奈良女子大学は、蓄積した生体データを解析する独自の解析エンジンの開発を進めている(図2)。
利用者の継続性を担保する“仕掛け”
現代人の多くはストレスを感じており、その解消は大きなニーズがあるとされる。中でも、ターゲットとして想定されるのは、女性ホルモンが減少し、自律神経のバランスが乱れやすい40代~50代の女性だ。ほてりやのぼせ、めまいなどの更年期症状による体調の変化だけでなく、子供の教育や親の介護などでストレスを感じることが多く、健康への意識が高い。
一方、この年代の女性は、なんとか携帯電話の操作に慣れている世代である。スマートフォンとセンサーの連携を取るといった、簡便なデータ蓄積手法を採用することで、記録の煩わしさを上手にサポートすることが重要となる。さらに、データを蓄積するほどデータ解析の精度が上がるといった仕組みを組み込んでおくことが求められる。このことが、継続するほど価値が高まり、他の同様のサービスへの乗換えを防ぐ要因にもなる。
今後のヘルスケア・サービスにおいて想定される利用シーンは、生体データの“見える化”といった技術突破だけでなく、利用者の継続性を担保する“仕掛け”を組み込むことで、利用者のニーズを刺激し、関心を高めることが必要になるだろう(図3)。