ビーラインの湯浅氏
ビーラインの湯浅氏
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6月末に提供予定のシュレックを題材にしたソーシャルゲーム
6月末に提供予定のシュレックを題材にしたソーシャルゲーム
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 ゲーム・パブリッシャー各社がソーシャルゲームの開発に力を入れていることもあり、コンソールが中心のE3でも、ソーシャルゲームの存在感が増している。その中でも、同ゲームの開発に力を入れているゲーム・パブリッシャーのうちの1社がカプコンだ。同社は2011年4月にBeeline(ビーライン)社を米国で立ち上げ、ソーシャルゲームの開発に本格的に乗り出した。同社が提供するゲームの累計ダウンロード数は、既に5600万件を超えるという。E3でも、同社の最新作を出展し、積極的にアピールしていた。そのビーラインを率いる同社CEOの湯浅緑氏に、現状と今後の戦略などを聞いた。(聞き手、根津 禎=日経エレクトロニクス)

――主な提供ゲームを教えてほしい。

湯浅氏 代表的なタイトルは、「スマーフ・ビレッジ」、「スヌーピー ストリート」、「モンスターペットショップ」の三つだ。この3タイトルは、全世界で展開している。次の目玉として2012年6月末にリリースするのが、人気映画「シュレック」を題材にした「Shrek's Fairytale Kingdom」だ。その後、4タイトル程度を連続でリリースする予定である。この4タイトルのうち、ハリウッド映画をベースにしたゲームが一つある。

――有名キャラクターを起用したフランチャイズ系のタイトルが大半を占めるのか。

湯浅氏 決してそうではない。フランチャイズ系と、オリジナル・キャラクターを利用したタイトルの比率は半々だ。新しいことを試すには、オリジナル・キャラクターを活用したゲームの方が向く。

――ビーラインのゲームのユーザー層は?

湯浅氏 設立当初から親子3代、3歳から80歳までの男女をターゲットにしている。実際、親子で楽しんでもらっている。例えば、モンスターペットショップでは、子供が遊んでいたものを親が面白がって楽しむようになったケースもある。またスマーフ・ビレッジは、古くから知られたブランドで、高齢者にも知名度が高い。

 ビーラインのゲームはiPhoneなどのスマートフォンで楽しめるので、寝ながら手に持って楽しめる。そのため、入院して寝ている人であっても、離れた家族と一緒に遊べる。スマートフォンに搭載されているタッチ・パネルであれば操作は直感的で、ゲームに不慣れな人でも楽しめる。

 現代では、家族は孤立しがちだ。私は、オンライン上で、時間と空間を越えた非同期の交流を促し、仮想的な家族の団らんを実現したい。例えば、ゲーム内のアイテムを親子で贈り合う、といった利用シーンを想定している。

――ユーザーのアイテム購入を促す仕組みは?

湯浅氏 例えば、時間限定や数量限定のアイテムを提供するなどして、なるべくアイテムを購入してもらえるようにしている。頻繁に、新しいイベントを開催して、ユーザーが飽きないようにする。例えば、季節性のイベントや売り切りセールなどだ。

 全世界で売れるアイテムだけでなく、特定の地域でよく売れるアイテムも同時に販売している。こうしたローカライズ(現地化)も行っている。例えばビーラインの日本法人は、日本市場向けコンテンツを開発している。例えばスヌーピー ストリートでは、他の国と内容だけでなく、課金体系も変えている。

 アイテム課金の方法も、各国で異なる。日本では当たり前の「ガチャ(注意:コンプガチャではなく、単なるガチャ)」は、ガチャガチャが置かれていない海外では、理解されにくい。ただし、カードバトルは海外でも特定のユーザーには理解されるであろう。

――今後、どの地域の市場が伸びるとみているか?

湯浅氏  ロシアとブラジル、そしてタイ、シンガポール、マレーシア、フィリピンといった東南アジアの市場が伸びるだろう。東南アジアはクレジットカードの所有率は数パーセント台と低いにもかかわらず、売り上げは順調だ。スマートフォンやタブレット端末上ならば、物流機能を各国に持たなくてもゲームを配信できる。それが世界展開で優位に働く。先ほど述べたように、家族の団らんを目的にサービスを展開している。家族の存在は万国共通であるため、家族をテーマにしたコンテンツは全世界に販売できる。

――サービスを始めてみて、予想外な出来事は起きたか?

湯浅氏 うれしい誤算として、同じゲーム・タイトルを長く遊んでもらえている。例えば、スマーフ・ビレッジの場合、リリース当初は、ユーザー数が増えるのは12~18カ月までだと思った。Facebook上のソーシャルゲームがそうだったからだ。だが、スマーフ・ビレッジはサービス開始から20カ月以上経過したが、まだユーザー数が増えている。ここまで来ると、ユーザーの口コミ効果は絶大で、ユーザー数は一定の割合で増え続けていく。ユーザー1名当たり、20人近くを誘導してくれている。こうした傾向は、どの地域でも同じだ。

――ゲーム・パブリッシャーの中には、家庭用ゲームや業務用ゲームを開発していた人材をソーシャルゲームの開発に振り分けている。ビーラインも同様か?