東芝はダブル・パターニング向けの対話・自動配線設計技術を開発し、49th Design Automation Conference(2012年6月3日~7日に米カリフォルニア州San Franciscoで開催)のWork-In-Progress(WIS)のポスター・セッションで発表した(ポスター番号55.60)。WISはその名の通り、現在、進行中のプロジェクトを発表するもので、ポスター・セッションにすることで、口頭発表よりも、多くの意見を得ることを狙っている。

図1●説明する児玉親亮氏 Tech\-On!が撮影。
図1●説明する児玉親亮氏
Tech-On!が撮影。
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図2●ポスター全体 東芝のデータ。
図2●ポスター全体
東芝のデータ。
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 今回の東芝の説明者は、児玉親亮氏(セミコンダクター&ストレージ社 設計メソドロジ・インフラ担当 主務)で(図1)、ポスターのタイトルは「Self-Aligned Double and Quadruple Patterning Aware Grid Routing Methods」である(図2)。20nm世代のプロセスの製造において、露光に既存のArF光源を液浸で使っても、解像度が足りない(いわゆるパターンが切れない)と言われている。

 それを補償する技術が、ダブル・パターニングである。ダブル・パターニングでは、これまで一つのマスクを使って1回の露光で作っていた構造を、別のマスクを使う2回の露光で作ることで、解像度を稼ぐ。

設計者は意識しなくてもOK

 例えば、n本の配線パターンを並べる場合、1枚目のマスクを使った露光で奇数番目の配線パターンを作り、2枚目のマスクを使う露光で偶数番目の配線パターンを作る。設計サイドとしては、これまでは一つのマスク用に用意していたデータを、異なる二つのマスク用データに分けて用意しなければならない。

 分けることを、一般にカラーリングと呼んでいる。カラーリングでは、製造後に隣り合うパターンは、異なるマスクが受け持つように、パターンを分ける(色分けする)必要がある。今回、東芝が開発したのは、設計者がカラーリングを特に意識しないでも、結果としてカラーリングされた設計データが得られることが最大の特徴と言える。

 なお、実際の製造プロセスでは、ダブル・パターニングを行う方法は複数ある。主なものは二つ。ピッチ・スプリット(LELE)法と、側壁プロセス法(Self-Aligned Double Patterning:SADP)である。上述した「製造後に隣り合うパターンは、異なるマスクが受け持つように、パターンを分ける」という基本的なルールは同じだが、それぞれの製造方法に応じた設計ルールが追加される。今回、東芝が対象にしたダブル・パターニング製造方法は、ポスターのタイトルにあるように、側壁プロセス法(SADP)である。