チャンスが巡ってきた。

 そこで、まずは技術者トレーニングの仕組みをオープン化しようとしました。その思いをOESFの三浦さん(代表理事の三浦雅孝氏)に話したところ「一緒にやろう」と誘われたのです。
 まずは、エンジニア向け教育マニュアルを社内用に使っているソフトウエア開発会社に行って「マニュアルを下さい。オープンにして下さい」とお願いしました。これだけ聞くと、とんでもない奴だと思われるかもしれません。しかし、その会社にもビジネス的なメリットがあると訴えました。

満岡秀一氏
満岡秀一氏
「エンジニアは新しい技術と速いマシンで燃える」と満岡氏。Androidは、OSまわり主体の組み込みLinuxよりもエンジニア数が圧倒的に多く、勢いがあると感じている
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ビジネス面のメリットというと。

 マニュアルなどの教材にその会社の名前を入れるのです。Androidなど、オープンソース環境でソフトウエア開発を志すエンジニアは皆その教材を使うわけですから、そこに名前が掲載されることは最大の広報になります。

とはいっても無償ではビジネスが拡大しないと考える人もいるでしょう。

 「オープンはタダでビジネスを損なう」という印象を持つ人はいます。しかし、例えばマニュアルは無料で公開しても、ちゃんとした講師によるレクチャーには金を払ってもよいと考える人もいます。ビジネスは成り立つのです。また、例えば講師をOESFが認定すれば差異化でき、教育の質の競争を起こせます。

企業が企業の看板を背負ってオープンソースのコミュニティで貢献できる仕組みを意識する必要がありますね。

 企業を巻き込むには、利益を上げられるサクセス・ストーリを理解してもらうことが必要です。当初は無料でも名前を出すと、開発案件を持ち込まれたり、製品を売りたいという申し出があったり。無償の活動が広告になって、まわりまわって利益をもたらします。
 こうしたことを理解した企業がコミュニティへの貢献の競争をする。1社、1人が持ち寄った技術は、みんなで育てていく、というスタンスです。われわれがやっているのは、鍋パーティです。みんなが食材を持ち寄ると、大きな鍋になります。

皆が競って食材を持ち込む環境はつくれるのでしょうか。

 エンジニアの開発したものに日が当たるような仕組みが必要になります。例えばソフトウエア開発会社では、詳しい人に皆が聞きに行くでしょう。聞かれた人は「師匠」といったレッテルを貼られて、それが励みになってもっと頑張ります。同じようなことを会社の枠を超えてやろうと。つまり、できるエンジニアをコミュニティ内で高みに上げる仕組みです。われわれが認定しているAndroid技術者認定試験制度「ACE」は、そんな役割を担えます。