ソフトウエア技術者のスキルアップとキャリアアップは、オープンソース環境ではどのようになるのか。Linuxベースのオープン・ソフトウエア開発プラットフォーム「Android」の普及を目指す一般社団法人OESF(Open Embedded Software Foundation)でエンジニア教育を担当している満岡秀一氏に聞いた。参加企業が儲かるオープンソース環境つくりを目指しており、エンジニアはコミュニティへの貢献を通して自らのスキルアップとキャリアアップを実現できるという。(聞き手は、三宅 常之=Tech-On!)

満岡秀一氏
満岡秀一氏
一般社団法人OESF エデュケーション ワーキンググループ コーディネーター
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満岡さんがOESFにかかわるようになったきっかけを教えてください。

 もともとはエンジニアで、米国のシリコンバレーに本社を置く組み込みソフトウエア会社に在籍していました。東京のオフィスでLinuxのデバイス・ドライバを開発していて、必死に仕事していました。徹夜して開発を終えても、デバイス・ドライバの開発者には日が当たりません。注目されるのは、アプリケーション・ソフトウエアばかりで…。

頑張っても報われた気がしなかったわけですね。

 そんな時、シリコンバレーのソフトウエア開発者の多くが、会社に在籍しつつ、オープンソースのコミュニティにも籍を置いて実名で活動していることを知りました。コミュニティで名を挙げると、スタートアップから声がかかって会社立ち上げにかかわる、といった世界があるのです。
 実際、コミュニティで活動していた私の友人が会社を辞めてスタートアップに転職するという。社名を聞いたら「Danger」だと。名前からしてどうかと思いましたが、彼は今Google社にいます。米Danger社は、ご存知の通り、米Android社を創業したエンジニアAndy Rubin氏の立ち上げた会社です。

オープンソースのコミュニティで名を挙げて「Androidの父」に引っ張られ、Danger社を経てAndroid社に移籍。移った会社はGoogleに買収された。友人のキャリアは、米国のダイナミズムを象徴しているようですね。

 それで、エンジニア同士がつながっているコミュニティを日本に持ってきたいと考えるようになりました。当初、日本では大企業が人材を囲おうとしていて、実名では動きにくい環境でしたが、日本でもオープンソースを自社の広報活動に取り入れるように変わってきました。