駐日スペイン大使館 大使のNavarro氏
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REE社のRodriguez氏
REE社のRodriguez氏
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 駐日スペイン大使館は2012年5月9日、東京でスペインの再生可能エネルギーの状況を説明するセミナーを開催した。その中で、2011年のスペイン国内での総発電量のうち、再生可能エネルギー由来の発電量が全体の約32%を占めたことを明らかにした。

 32%の内訳は、風力発電由来が15.7%、水力発電由来が10.3%、太陽熱と太陽光発電由来が計3.6%、小水力発電由来が1.9%、というもの。これに対して1995年時点では、水力発電以外はほとんどなかったという。「スペインでは1980年代に原子力発電施設の新規の建設を停止した。その代わりとして、再生可能エネルギーを増やした結果が今の状況だ」(駐日スペイン大使館 特命全権大使のMiguel Angel Navarro氏)。

 今後もスペインは再生可能エネルギーの割合を高めていく方針で、「2020年時点で発電量の40%が再生可能エネルギー由来になることを想定したインフラの準備を進めている」(同国で送電制御を統括するRed Electrica De Espana(REE)社)という。

風力発電は現行の2倍近くまで増やせる

 REE社は、2012年4月16日の早朝に風力発電の出力が同国内での全消費電力の60.46%を占めたことにも触れた(REE社の発表資料Tech-On!の関連記事)。

 加えてREE社は、2011年末時点での風力発電の設備容量が約20.8GWである一方で、今後の計画として、2015年に風力発電の設備容量を27.9GW、2020年には同35GWにする予定であることを明らかにした。「将来的には(全設備容量の4割となる)40GWにするのが目標だが、それにはいくつかの課題がある」(REE社のJuan Ma. Rodriguez氏)という。

 具体的には、(1)電力系統に大幅な電圧変動が生じた際に、風力発電を系統に接続したまま電圧変動を押さえ込む「fault ride-through」技術の風力発電システムへの実装を徹底させること、(2)風力発電の天候などによる発電量変動の予測システム「SIPREOLICO」の予測精度を高めること、という技術的課題があるとする。

 もっとも、こうした課題は急速に解決に向かっている。(1)のfault ride-through技術を実装したシステムは2007年に初登場したが、実装を義務化した2008年以降急激に増えている。「現時点では(約21GWの設備容量のうち)0.7GW分がまだ実装していない」(Rodriguez氏)ものの、未実装のシステムは急激に減っている。また、(2)の予測システムの精度も年々高まっている、とした。