図1 今回のインタビューに応じたnasne担当者。左から、SCE Worldwide Studios JAPANスタジオ インターナルデベロップメント部 ゲームデザイングループ クリエイティブディレクターの西沢学氏、同社 商品企画部 ハードウエア企画課 課長の渋谷清人氏、同社 ペリフェラル事業部 開発部2課 課長 河原裕幸氏。中央に写るのがnasneである。
図1 今回のインタビューに応じたnasne担当者。左から、SCE Worldwide Studios JAPANスタジオ インターナルデベロップメント部 ゲームデザイングループ クリエイティブディレクターの西沢学氏、同社 商品企画部 ハードウエア企画課 課長の渋谷清人氏、同社 ペリフェラル事業部 開発部2課 課長 河原裕幸氏。中央に写るのがnasneである。
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 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は2012年4月17日、500GバイトのHDDと、地上/BS/110度CSデジタル・チューナーを搭載した「nasne(ナスネ)」を同年7月19日に日本で発売することを明らかにした(Tech-On!関連記事1)。nasneは、ネットワークレコーダー(テレビ番組の録画・視聴・録画管理)としてだけでなく、メディアストレージ(NAS)としても機能する。このため、同社はnasneを「ネットワークレコーダー&メディアストレージ」と呼ぶ。

 SCEは、据え置き型ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」用地デジ視聴・録画キット「torne(トルネ)」を2010年3月から販売している(Tech-On!関連記事2)。torneは主に,USB接続の小型地デジ・チューナーと,PS3で動作する視聴・録画アプリケーション(アプリ)から成る。従来のHDDレコーダーと一線を画す「快適」で「楽しい」操作を実現したことで、大ヒットを飛ばした。国内だけの販売にも関わらず、既に100万台以上の累計出荷台数(SCEから販売店などに引き渡された数量)を誇る。

 torneとの大きな違いは、ソニーのパソコン「VAIO」やタブレット端末「Sony Tablet」、スマートフォン「Xperia」などでも、テレビ番組の視聴や録画予約を実行できる点である。nasne本体を家庭内ネットワークに接続することで、PS3のtorneやVAIO用の視聴・録画アプリケーション(アプリ)「VAIO TV with nasne」を使って、地上/BS/110度CSデジタル放送の番組を視聴・録画できる。

 加えて、nasneが対応する放送波もtorneと異なる。torneは地デジ放送だけだったが、nasneは地上/BS/110度CSデジタル放送に対応する。

 なお、nasneの登場に伴い、「torne」の位置付けが変わった。これまでtorneは、USB接続のPS3用地デジ・チューナーと,PS3で動作する視聴・録画アプリの両方を指していた。これからは、torneはnasneやPS3用地デジ・チューナーを利用するためのPS3用視聴・録画アプリ、という位置付けになる。

 今回、nasneの開発経緯や特徴、今後の展開などについて、SCEの開発担当者に話を聞いた(図1)。その内容を前編と後編の2回に分けて掲載する。前編では、nasneの概要や開発経緯などを紹介する。(聞き手:根津禎=日経エレクトロニクス)

――いつごろから開発をスタートしたのか?

 SCE:約2年前から開発を始めた。出発点は、torneにおけるBS/CS対応をどうするのか、ということだった。そしてtorne発売の約3ヵ月後には、「ネットワークレコーダー&メディアストレージ」という、現在のnasneの方向性が定まった。

――nasneの位置付けは?

 SCE:nasneの位置付けについては、開発当初から悩んだ。torne後継機として「torne2」にするなどの案もあった。しかし、家庭内ネットワーク上での利用が前提、PS3以外の機器でも利用できるなど、torneとは別の商品として位置付けた方が適切だと判断して、違う名称を付けて現在の形とした。nasneは、ネットワーク上での利用を前提した機器なので、1対1接続向けのHDMI端子などを搭載していない。

 nasneは、ソニー・グループの製品でテレビを見る用途のハブとして機能することを期待されている。ただ、今までプレイステーションはあらゆるテレビとつながり、さまざまな人々にその「コンピュータ・エンタテインメント」を提供してきた。nasneもソニー・グループ製品以外の機器で全く利用できない、という状況にはしたくない。基本的に、DLNAとDTCP-IPに対応する機器であれば、nasne内の録画コンテンツを視聴できる。ただ、SCEとして動作を保証するのはソニー・グループの製品のみである。

 ソネットエンタテインメントが提供する「Gガイド.テレビ王国CHAN-TORU」を使えば、PS VitaやVAIO、Sony Tablet、Xperiaなどから家庭内にあるnasneにアクセスし、外出先からでもテレビ番組の録画予約や録画データの削除を実行できる。CHAN-TORUはWebKitベースで開発されているので、ソニー・グループ製品だけでなく、Android2.2以上の端末やiOS4.3以降、パソコン(ブラウザーを利用)で使用できる。ただし、録画番組の視聴はできない。また、ソニーが今後提供予定のAndroid用アプリ「RECOPLA(レコプラ)」を利用すれば、Sony Tabletでnasne内の録画番組を視聴できる。

――メディアストレージ(NAS)として機能するときは、DLNA1.5で動作すると聞いている。ネットワークレコーダー(テレビ番組の録画・視聴・録画管理)として機能する場合も、DLNAをベースに動作するのか?

 SCE:そうだ。ただし、torneや「VAIO TV with nasne」のような専用アプリを使ってnasneをネットワークレコーダーとしてフルに利用する場合は、nasneとPS3やVAIOといったクライアント機器の間は、「DLNA+α」という形でやり取りしている。

 nasneは、DLNAでDTCP-IPで保護されたコンテンツを配信(放送中の番組や録画した番組の配信)できるので、クライアント機器でそれらのコンテンツを受信して視聴できる。Xperiaなどは、CHAN-TORUを使ってnasneに録画予約を入れ、XperiaにインストールしたDLNAクライアントを使ってnasne内の録画番組を視聴できる。

――外出先からnasne内の録画番組を視聴できるのか?
 SCE:それはできない。テレビ番組視聴に関しては、あくまで家庭内の環境のみでユーザーに楽しんでもらう。

後編に続く