NECは、利用されていない周波数帯を利用するコグニティブ無線の受信回路を、1個のチップで実現する技術を開発した(ニュースリリース)。コグニティブ無線とは、周囲の無線環境を認識して空き周波数を見つけ利用することで、効率的な通信を実現する技術。災害現場で発生した無線通信の障害や、将来の周波数資源の不足を解決する技術として注目を集めている。
開発したチップは、30MHz~2.4GHzの周波数帯において、任意の周波数の信号を受信するとともに、電波強度を計測して空き周波数を見つける回路を搭載した。この周波数帯は、警察、消防、防災向けの公共業務用無線や、パソコンやスマートフォンなどに搭載された無線LANなど、さまざまな無線アプリケーションに対応している。また、無線の受信回路を1チップで実現することで、無線機器の小型化と省電力化に貢献するという。今回の開発のポイントは、複数の周波数信号を除去できるフィルタを開発したことと、任意の周波数の電波強度を低消費電力で計測できるようにしたことだ。
複数の周波数信号を除去できるフィルタを開発
複数の周波数から利用できる空き周波数を見つけ出す際に、従来は調べたい周波数以外の信号を除去するフィルタ部品を複数用意していたため、チップ面積が大きくなり、コストが上がっていた。今回は、混信する複数の周波数の信号を除去できるフィルタ回路技術を開発。これにより、幅広い周波数帯から任意の信号を選択し受信できる回路を1チップで実現した。従来の複数のフィルタ部品を用いていた場合に比べ、面積が約1/3まで小さくなり、低コスト化が可能になったという。
任意の周波数の電波強度を低消費電力で計測可能
任意の周波数の電波強度を調べる検出器において、従来は弱い電波の強度を細かく計測するために、強い電波の強度も細かく計測していたため、計測結果を読み取るA-D変換器の消費電力が大きくなっていた。今回は、大小さまざまな強度の電波を検出する用途と、弱い電波のわずかな強度の違いを細かく検出する用途の両方に、プログラムの変更で対応できる電力検出技術を開発した。これにより、消費電力の大きなA-D変換器が不要となり、従来と比較して約1/2の省電力化が可能という。