ソニーの平井氏
ソニーの平井氏
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平井氏と同氏を支える経営幹部たち
平井氏と同氏を支える経営幹部たち
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 ソニーは2012年4月12日に本社で経営方針説明会を開催し、同月1日に同社 社長兼CEOに就任した平井一夫氏が、経営再建への施策を説明した。平井氏は冒頭、2011年度に5200億円の最終赤字を計上する見通しとなったことに触れて「CEOとして重く受け止めている。ソニーが変わるのは今しかないと考えており、復活へ向けて社員一丸となって全力で取り組む」とした。

 平井氏が最優先課題と位置付けたのは、不振が続いているエレクトロニクス事業の再建だ。そのための重点施策として、(1)コア事業の強化、(2)テレビ事業の再建、(3)新興国事業の拡大、(4)新規事業の創出とイノベーションの加速、(5)事業ポートフォリオの見直しと経営のさらなる健全化、の五つを挙げた。

 (1)の「コア事業の強化」については、デジタル・イメージング(カメラとイメージ・センサ)、ゲーム機、モバイル機器(スマートフォンやタブレット端末、パソコンなど)の三つをコア事業と位置付け、これらに「研究開発投資の70%を投じる」(平井氏)とした。エレクトロニクス事業の売上高に占めるコア事業の比率を2011年度の60%から2014年度に70%へ高め、営業利益の85%をコア事業で稼ぐことを目指す。

 コア事業のうち、デジタル・イメージング事業では、2014年度の売上高を1兆5000億円と2011年度比で約1.5倍に伸ばし、10%以上の営業利益率を目指すとした。ゲーム機事業については、2014年度の売上高目標を1兆円、営業利益率目標を8%とする。モバイル機器に関しては、2014年度の売上高を1兆8000億円と2011年度比で倍増させ、2011年度に赤字だった営業損益を大幅に改善させるという。スマートフォンなどの主要製品において、「商品化までのリードタイムを1/2以下へ短縮し、迅速に新製品を展開することにより、リーディング・ポジションの獲得を狙う」(平井氏)とした。

 (2)の「テレビ事業の再建」に関しては、固定費の削減とオペレーション・コストの削減、商品力の強化によって2013年度の黒字化を実現するという。固定費の削減については、韓国Samsung Electronics社との液晶パネル合弁事業の解消などにより、2013年度に2011年度比で60%の削減を目指す。オペレーション・コストについては、モデル数の削減などにより2013年度に2011年度比で30%の削減を見込む。商品力の強化では、液晶テレビにおける高画質/高音質の追求と地域ニーズの取り込みに加え、有機ELや「Crystal LED」などの次世代ディスプレイの商品化、モバイル機器との連携などを挙げた。

 テレビ事業については現在、「他社との提携を含むさまざまな可能性を検討している」(平井氏)という。特に、有機ELディスプレイについては、商品化に向けて「他社との協業も視野に入れている」(同氏)と語った。

 (3)の「新興国事業の拡大」に向けては、エレクトロニクス事業の新興国での売上高を、2011年度の1兆8000億円から、2014年度に2兆6000億円へ高めるとの目標を示した。これにより、売上高に占める新興国比率は2011年度の50%から2014年度に60%に高まる見通しという。ここでは、地域ニーズに合った商品の展開や、映画・音楽事業とのシナジーを生かすとする。

 (4)のうち、「新規事業の創出」ではメディカル(医療)事業を例に挙げた。プリンタやモニターといった既存の医療周辺機器事業に加え、今後はイメージ・センサや画像処理技術などを生かした医療機器(内視鏡など)向け事業や、医療診断機器などのライフサイエンス事業に力を入れる。医療周辺機器事業の売上高を2014年度に500億円に高めるとともに、将来的にメディカル事業で売上高1000億円を目指すという。「ソニー(の事業)と合致する領域では、M&Aを積極的に行う」(平井氏)。「イノベーションの加速」については、一例として、フルHDの約4倍の解像度を持つ「4K」関連技術への注力を挙げた。

 (5)の「事業ポートフォリオの見直しと経営のさらなる健全化」に関しては、非中核事業に関して「他社との提携や事業譲渡の可能性を検討する」(平井氏)という。具体的には、2012年4月1日付でジャパンディスプレイに統合させた中小型液晶ディスプレイ事業の他、ケミカルプロダクツ事業の譲渡について交渉中であり、電気自動車/蓄電用の電池事業でも他社との提携を検討しているとした。こうした事業ポートフォリオの見直しに伴い、2012年度に約1万人の人員削減を見込んでいる。この1万人に、中小型液晶ディスプレイ事業関連の人員は含まず、ケミカルプロダクツ事業関連の約3000人は含むという。2012年度の構造改革費用は750億円を見込む。

 これらの施策を、平井氏や技術/商品戦略担当の役員などの下、「One Sony/One Managementの体制で進めていく」(平井氏)。2014年度にソニー・グループ全体の売上高を8兆5000億円、営業利益率を5%以上とすることを目指し、エレクトロニクス事業では同年度に売上高6兆円、営業利益率5%の達成を目指すとした。