国内メーカーなどで組織する業界団体「ブロードバンドワイヤレスフォーラム(BWF)」は、電力を無線で伝送するワイヤレス給電技術の標準規格策定を開始した。

 スマートフォンやテレビなどの家電機器を始め、電気自動車(EV)などへの応用を想定した標準規格とする。無線・放送分野の規格を扱う「ARIB(電波産業会)」の標準規格として、成立することを目指す。将来的には、国際的な標準化団体に対して方式提案することも視野に入れる。

 BWF内の作業部会で、約40社の企業が加盟する「ワイヤレス電力伝送ワーキンググループ」が、標準規格策定に向け「WPT標準開発部会」を立ち上げた(同ワーキンググループの参加企業リスト)。同グループ中の、約20組織が参画している。今後、利用するシステムや電力伝送プロトコル、安全指針、活用する周波数などについて議論する。規格策定終了の目標時期は未定という。

 BWFの同ワーキンググループは従来、無線電力伝送を機器などで利用する際のガイドライン策定作業を中心に取り組んでおり、これまでに携帯機器(携帯電話機やノート・パソコンなど)に向けたガイドライン「Ver1.0」を策定済みである。ただし、電力伝送手法など、標準規格そのものは策定していなかった。それが今回、ARIB標準を目指した規格策定を行うという方針を、はっきりと打ち出した格好である。

 WPT標準開発部会には、いくつかのサブグループを設ける予定。システム定義、周波数などの要求条件、安全指針、人体防護指針など一般的共通条件については部会全体で議論し、利用技術や応用製品ごとに検討すべき部分に関してはサブグループで扱う。策定においては、JARI(日本自動車研究所)やJSAE(自動車技術会)、IECの国内関係委員会、JEITA(電子情報技術産業協会)などと連携する予定。このほか、海外の標準化組織とも連携して、仕様をまとめていく方針だ。

 無線電力伝送(ワイヤレス給電)の規格策定に関しては、海外勢の動きが加速している状況にある。例えば米CEA(Consumer Electronics Association)で無線電力伝送の標準化作業を進めている「R6.3 Subcommittee」では、活用する周波数帯の議論なども始まっており、6.78MHz帯が提案されるなど、具体的な討議が活発になっている。このほか韓国TTA(Telecommunications Technology Association)がCEAのR6.3に倣った標準化プロジェクトを発足させ、標準化活動を始めている。BWFではこうした海外の動向を睨みながら、方式などを議論していくとみられる。