記者会見に臨む東京医科歯科大学とソニーの関係者
記者会見に臨む東京医科歯科大学とソニーの関係者
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 東京医科歯科大学とソニーは、医療分野における共同研究の加速や人材育成などに向けたプログラムを2012年4月に開始する。主に、技術の活用によって医療の可視化を図る「ビジュアライズド・メディスン(visualized medicine)」の分野に注力する。例えば、3Dヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)技術の内視鏡手術への適用を検討するという。

 ソニーとしては、同社が保有する要素技術の医療応用の促進を図ると同時に、「エレクトロニクスと医療の架け橋となる人材の育成」(同社 業務執行役員 SVP、先端マテリアル研究所 所長の熊谷修氏)を進める狙い。同社は2012年4月に始動する新体制において、メディカル分野を将来のコア事業の一つにすべく事業推進を加速する考えを示している(デジタルヘルスOnline関連記事)。今回のプログラムは、その取り組みの一翼を担うものと位置付けられそうだ。

「信頼関係」をベースに発展

 東京医科歯科大学とソニーは、かねて連携を進めてきた。例えば、ソニーは2004年、東京医科歯科大学のオープンラボに入居、エレクトロニクス技術を活用した生命科学領域での基礎研究に共同で取り組んできた。その成果の一つとして、2011年10月には誘電サイトメトリー(細胞の電気的性質の違いを利用して、個々の細胞を標識物質なしに識別する技術)を発表している (Tech-On!関連記事)

 こうした取り組みを通して培った「信頼関係」(東京医科歯科大学 研究担当理事、副学長の森田育男氏)を軸に、2011年9月に両者は包括連携協定を締結。さらなる協業の拡大について協議を進めた結果、今回のプログラムの開始に至ったという。

イメージング技術を活用した新薬の毒性検査や眼科領域での早期診断も

 今回開始するプログラムは、大きく二つ。(1)ビジュアライズド・メディスンの検討に向けた研究サポートファンドの設定、(2)ビジュアライズド・メディスンを推進するための各施策プログラムの実施、である。

 (1)については、ビジュアライズド・メディスンに関する両者共通の研究テーマに対して、臨床応用を視野に入れた研究サポートファンドを設定。医療機器や臨床プロトコル開発などの加速を図る考え。研究サポートファンドを設定するテーマとしては、前述の3D HMD技術の内視鏡手術への適用の他、「イメージング(画像解析)技術を活用した新薬の毒性検査や眼科領域での早期診断」(ソニー 先端マテリアル研究所 統括部長の安田章夫氏)などが既に候補に挙がっているという。

 (2)については、まず、ビジュアライズド・メディスンに関連する各テーマに沿った有識者を招聘し、両者の研究者に向けた「クリニカルサミット」を実施する。さらに、ソニーの若手研究者の医療分野でのレベルアップを図るため、東京医科歯科大学大学院で専用の教育プログラムを設定。1年間、大学院研究生として教育するプログラムを実施する。初年度については、既にソニー社内での公募などによって、4名の研究員派遣が決まっているという。