東日本大震災に端を発する電力不足の影響で、省エネが特徴のLED照明器具の出荷数量が急増している。例えば、数量ベースでLED電球が電球全体のシェア・トップに立った。家庭の天井灯に使うLEDシーリングライトは金額ベースで品目別のトップである。オフィスでの導入も進む。ある照明器具メーカーによれば、2011年のLED照明器具の売上高は2009年比で約10倍になる見込みという。

 LED照明器具はもはや特別なものではなく、しっかり市民権を得たといえよう。伸び盛りのLED照明市場に魅力を感じ、新規参入するメーカーは後を絶たない。既存や新規参入、そして国内や海外のメーカーを問わず、数多くのメーカーがLED照明器具の製品競争を繰り広げている。

 今後、一層激化するとみられる製品競争で抜き出るカギは何か――。そのヒントになりそうな技術がある。光源である白色LEDの放熱対策だ。白色LEDが発する熱を効果的に逃がせれば、白色LEDの発光部分の温度、いわゆる接合温度の上昇を抑えられる。接合温度が低いほど発光効率を高くできるので消費電力を抑えられ、製品が“エコ”であることをより強調できる。あるいは、従来と同じ接合温度で動作させるのであれば、少ない白色LEDに電流を多く流すことで明るさを稼ぎ出すことも可能だ。部品コストの抑制が狙え、製品の低価格化にもつながる。

熱放射への期待度大


 もちろん、LED照明器具ではこれまでにも放熱対策が採られてきた。アルミニウム基板など、熱伝導率が高い金属製のヒートシンクによる熱伝導を使い、白色LEDの熱を逃がすのは常套手段だ。LED照明器具は筐体内が密閉されているケースが多く、かつ筐体内は狭いので筐体内の空気を利用した対流による放熱はあまり期待できない。そのため、熱伝導による放熱に頼ってきた。

 だが、より効果的な熱対策を施すことを考えると、熱伝導に加え、熱放射を活用することが重要になるとみられる(図1)。熱対策のコンサルタントであるサーマル デザイン ラボ代表取締役の国峯尚樹氏によれば、筐体が密閉型かつ対流による熱移動が望めない状況ほど、熱源から熱放射で筐体などに熱を放出する重要性が高まるという。放熱手段を通信にたとえるならば、有線の経路を使ってデータ(熱)を伝えるのが熱伝導、無線の経路を使うのが熱放射といえよう。

(次回に続く【3/23公開予定】)

図1 放熱ルートは伝導・対流・放射 : 機器内部で発生した熱は、伝導と対流、放射によって外部に放出される(a)。放熱経路は、熱抵抗による等価回路で表現できる(b)。密閉型の筐体では、放射による放熱を効果的に活用したいところだ。(図:サーマル デザイン ラボ 代表取締役の国峯尚樹氏)
図1 放熱ルートは伝導・対流・放射 : 機器内部で発生した熱は、伝導と対流、放射によって外部に放出される(a)。放熱経路は、熱抵抗による等価回路で表現できる(b)。密閉型の筐体では、放射による放熱を効果的に活用したいところだ。(図:サーマル デザイン ラボ 代表取締役の国峯尚樹氏)
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