LG電子の「糖尿フォン」
LG電子の「糖尿フォン」
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2011年に「産業融合促進法」が制定


 ところが、糖尿フォンの失敗をきっかけに韓国政府は変わり始めた。ICTと既存産業の融合を本格的に推進するためには、新製品を業種ごとに認可・規制する既存の法律を改定しなくてはならないことを切実に痛感したのだ。

 ヘルスケアの場合、基本的にICT政策を担当する省庁と医療機器を担当する省庁の両方の規制を受けるため、商用化するまで何年も時間がかかり、企業が財政難に陥り途中で事業を諦めてしまうこともあった。韓国政府は制度の見直しを続け、2011年に「産業融合促進法」が制定されることになった。

 産業融合促進法により、認可制度を簡素化する融合新製品適合性認証制度が始まった。製品や技術が新しすぎて認可の基準や規格がない場合、企業はその製品分野に最も近い関係機関に適合性認証を申し込み、6カ月以内に認可を受けられるようにした。また複数の機関にまたがって許可や認証を取らないといけない場合は、企業から申請書を受け取った機関が他の機関と協議して認可を一括処理するようにした。

失敗から学んだ韓国、Samsung社の投資発表で今後への期待高まる


 韓国はここ10年の間、「技術優位のデジタルヘルスケア事業は失敗する」ということを学んだ。韓国のヘルスケアが予想よりうまくいかなかったのは、「優秀な技術は売れて当たり前」と勘違いしていたからかもしれない。ヘルスケアは技術より法制度の壁が問題だった。そして韓国は、経験した失敗事例から二つの課題を学んだ。すなわち、(1)機器販売で終わるのではなく患者と医療従事者のニーズを把握し続け、サービス・モデルを作ること、(2)政府の制度の中で具体的にどこをどう直すべきが要求し続けること、である。

 韓国のヘルスケア事業は、2010年にSamsung社とLG社が新規事業として医療機器とバイオ産業に投資することを発表してから、また空気が変わり始めている。Samsung社が得意とする半導体や携帯電話端末、ディスプレイは韓国のIT輸出3大品目でもある。「Samsung社が投資する分野=国家を代表する産業になる」という期待から、ヘルスケアや次世代医療機器関連企業の株価も上がり続けているほどである。

■その他の趙章恩氏のコラムは、デジタルヘルスOnlineの「韓国スマートヘルスケア最前線」に掲載しています