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技術優位のデジタルヘルス事業は失敗する

韓国の過去の失敗から学ぶ

2012/03/14 10:00
趙章恩=ITジャーナリスト
出典: デジタルヘルスOnline,2011年10月23日 , (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
LG電子の「糖尿フォン」
LG電子の「糖尿フォン」
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 韓国では1990年代から医療保険や病院の情報化といった医療情報化が進み、ヘルスケアを国家産業として支援してきた。展示会では、利用者が認識することなく健康情報を測定して問題があれば自宅で遠隔診療してもらえる便利なヘルスケア・サービスが多数登場した。だが、現実には実証実験止まりでなかなか商用化されていない。それは、技術ではなく法制度や省庁間の縄張り争いといった問題があったからだ。

キャリア代理店で販売できず自然消滅


 法制度に足を取られて失敗した代表的な事例が、LG電子の携帯電話機である。

 2004年、LG電子は「糖尿フォン」という血糖値を測れる携帯電話機を開発した。携帯電話機の電池パックに血糖測定器を搭載しており、そこに血液を垂らした棒を差し込むと画面に血糖値が表示される。インターネットを介して血糖値のデータはデータベースに保存され、測定された血糖値を分析して健康管理アドバイスもしてもらえるというものだった。携帯電話機の端末が約30万ウォン(約2万4000円)、血糖値測定パックが約10万ウォン(約8000円)と、当時の携帯電話機にしては若干高いというほどで、決して高価なものではなかった。

 糖尿フォンが開発された背景には、2001年から始まったソウル聖母病院のUヘルスケア事業団による遠隔糖尿管理サービスがある。聖母病院で診療を受けている糖尿患者の中で、頻繁に病院に来られない患者を対象に、自宅で血糖値を図って専用のWebサイトに記録すると、そのデータを元に健康管理のアドバイスをする実証実験を始めた。血糖値を測定する機器として携帯電話機とPDAも活用した。インターネットを使って測定と同時に病院にデータが送られるようにすることで、少しでも手間をかけずヘルスケアを行うためである。この実験で使われたのがLG電子の「糖尿フォン」で、2004年商品化されたのだ。

 展示会やショールームでは最先端の携帯電話機として注目された「糖尿フォン」だったが、実際にはほとんど売れなかったという。「糖尿フォン」の目玉である血糖値測定と健康管理アドバイスは遠隔診療に当たるため、医療機器としての認可を得る必要があった。その結果、携帯電話機でありながらもキャリアの代理店では販売できなかったことで、自然消滅してしまったのである。

他にも消滅した機器が…


 LGCNS社の「タッチドクター」も、サービスを中断している。同機器は、2008年末に登場したモニター付きホームヘルスケア機器の一つで、インターネットも利用できる。慢性疾患の患者がこの機器を使って血圧や血糖値を測ると、ヘルス・マネージャーが個人に最適化された健康プログラムや病院との連携サービスを提供するというものである。この機器の開発にはIntel社も参加し、韓国の大学病院や医師会もパートナーとして参加していた。しかし、ヘルスケアに関する国民の認識がまだ低く、300万ウォン(約24万円)もする高価な機器を購入しようとする患者はいなかった。韓国の医療業界では、市場を先行きしすぎたために失敗した事例と評価されている。

 便利で革新的なサービスであったにも関わらず、糖尿フォンもタッチドクターも、話題になっただけで普及することなく姿を消してしまった。

2011年に「産業融合促進法」が制定


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