図1 タッチ・センサ内蔵液晶の構造
図1 タッチ・センサ内蔵液晶の構造
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 液晶パネル陣営にとって悲願の製品が、やっとスマートフォンに向けて量産出荷される。英Sony Mobile Communications社は、2012年第2四半期にスマートフォン「Xperia S」「同 P」「同 U」を発売する。これに、タッチ・センサを内蔵した液晶パネルが載っているのだ。

 これによって液晶パネル陣営は、第1に台湾TPK Holding Co., Ltd.(宸鴻)と台湾Wintek Corp.(勝華)から仕事を奪うつもりだ。両社は、タッチ・パネルを液晶パネルに貼り付ける業務を一手に担ってきた。タッチ・センサ内蔵となれば、この業務が発生しなくなる。

 第2に液晶パネル陣営は、韓国Samsung Mobile Display社の有機ELパネルに対抗する考えだ。同社のタッチ・センサ内蔵有機ELパネルはこれまで、薄さで優位に立っていた。タッチ・センサ内蔵液晶は、タッチ・パネルを外付けした液晶と比べて、3~4割薄い。透過率が最大1割高いという特徴もあるので、有機ELに対する競争力が増す。

 Xperiaの新機種が採用したタッチ・センサ内蔵液晶は、ソニーモバイルディスプレイが量産する。同社は同液晶を「Pixel Eyes」と呼んでいる。いわゆる「インセル」方式を採っており、画素数は4型品の場合で540×960画素だ(図1、技術の詳細は日経エレクトロニクス2012年2月20日号、pp.18-19を参照)。大規模な量産開始は、2012年第2四半期から。我々、台湾Isaiah Researchは、その規模が約40万枚/月になるとみている。同年第3四半期には70~80万枚/月には増えそうだ。ソニーモバイルディスプレイは、タッチ・コントローラ/液晶ドライバICを台湾Orise Technology Co., Ltd.(旭曜)から調達するもよう。

 インセル方式のタッチ・センサ内蔵液晶は、2012年後半に台湾AU Optronics Corp.(友達)も量産出荷を始める計画だ。生産する品種は4.66型の540×960画素品など。製造に用いるガラス基板は、3.5世代あるいは4.5世代になるだろう。