米Microsoft社は、組み込み機器向けのソフトウエア製品「Windows Embedded」について説明会を開催した。同社のジェスチャー入力装置「Kinect for Windows」や、テーブル型コンピュータの「Surface」を使った実演を披露した。

 実演は、かつてMicrosoft社の傘下にあったデジタル広告代理店の米Razorfish社が構築した。Razorfish社のEmerging Experiences部門が開発した小売店向けのソフトウエア・プラットフォーム「5D(開発コード名)」を公開した。2012年2月に提供が開始された商用版のKinect SDKを用いている(Tech-On!関連記事)。

図1
Kinectで操作
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図2
ディスプレイ上部にKinect for Windowsを設置
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図3
バーチャル試着の様子
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デジタルサイネージにKinect

 同システムは、2012年1月に米国ニューヨークで開催された小売業関連の展示会「NRF(National Retail Federation Annual Conference and EXPO)」で発表されたものである(Microsoft社の発表資料)。

 5Dは、顧客に小売店舗への入店を促したり、店舗内で商品の情報を提示したりするシステムである。店舗の外のショーウィンドウや店舗内の大型ディスプレイ、顧客の持つスマートフォン、店員が持つタブレット端末、店舗のCRMシステムなどと接続する(Tech-On!関連記事)。

 実演では、大型ディスプレイの上部にKinectを設置してユーザーの位置や姿勢などを認識し、ネクタイなどの試着を画面上でシミュレーションできる様子を見せていた。

 店員が持つタブレット端末には商品の候補が表示されており、タブレット上でそれらを大型ディスプレイの方向にスワイプすると、その商品(ネクタイ)の情報がネットワーク経由で大型ディスプレイに転送され、ネクタイを仮想的に試着した様子(バーチャル試着)が大型ディスプレイに表示される(下記動画の1:13頃からがその様子)。

 複数デバイス間で直感的に情報をやり取りするという意味では、かつてソニーCSLが1990年代に提案したUI「Pick-and-Drop」に似ており、Pick-and-Dropのペンによる「pick動作」をタッチ操作に置き換えたようなイメージだ。

 「スマートフォンが出現したことで、顧客は店舗の中であっても商品について下調べができるようになった。店舗内で実物の商品を見た上で、価格の比較や実際の注文はネットで行う顧客もいる。小売店にどう顧客をつなぎ止めるかが課題になっている」(Microsoft社 Windows Embedded Business、Asia Pacific & Greater China & Japan Region Marketing DirectorのJohn Boladian氏)。

発売されたばかりのSurface端末を使った実演も

 説明会では、Microsoft社のSurfaceを使った実演も行った。画面上に商品の写真などが表示されており、タッチするとその情報などが表示されるほか、Surface上に置いた顧客のスマートフォンまで商品の写真をドラッグすると、その情報をスマートフォンに自動的に転送・保存し、後で商品を注文することができる。

図4
Samsung社のSUR40による実演。Surface上でスマートフォンの位置まで写真をドラッグすると、その写真がリアルタイムにスマホの画面にも表示され、商品の情報が自動転送される。
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 テーブル型コンピュータとしては、2012年1月に韓国Samsung Electronics社が販売を開始した「SUR40 for Microsoft Surface」を用いた。SUR40では、ディスプレイの画素内に赤外線センサを集積しており、ディスプレイ近傍の対象物によるバックライトの反射光を読み取ることで、対象物の2次元的な形状などを把握できるようになっている(Tech-On!関連記事)。