パナソニック 生産革新本部 ロボット事業推進センター 所長の本田幸夫氏
パナソニック 生産革新本部 ロボット事業推進センター 所長の本田幸夫氏
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「超高齢化社会を日本の新たな成長につなげる」と説明
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 超高齢化社会の到来を見据え、パナソニックは今、人との共存を目指す生活支援ロボット事業の強化を進めている。「『産業用ではないロボットをやろう』という、大坪(同社 代表取締役社長)の強い意向がある」――。2012年1月31日に開催された「第12回大阪大学医工情報連携シンポジウム『大都市型生活医療支援拠点でスマートライフを!』」において登壇した同社 生産革新本部 ロボット事業推進センター 所長の本田幸夫氏は、こう切り出した(関連記事)

 本田氏は、「高齢化社会を元気にするパナソニックのロボット事業 ~人とロボットが共存する豊かな社会を目指して~」と題して講演。同社の取り組みや考えの一端を紹介した。まず、生活支援ロボットに注力する背景として、超高齢化社会という「予測可能な未来がある」(同氏)ことを挙げ、同社会を真っ先に経験する日本に新たな産業としてのチャンスが到来しているとした。さらに、東日本大震災を踏まえ、「不測の事態への備えという観点からも、ロボット技術は重要になる」(同氏)と位置付けた。

安全規格、インフラの整備が必要

 生活支援ロボットの例としては、現在、「ルンバ」に代表されるお掃除ロボットが話題を呼んでいる。一方で、「パナソニックでも、かなり前に、お掃除ロボットを完成させていた。しかし、社内でのリスクアセスメントの結果、発売を断念した経緯がある」(本田氏)という。こうした話を踏まえながら、「人と共存するロボットに関する安全規格が整備されていない。どこまでの安全性を求めていく必要があるのか、今後の課題になる」(同氏)とした。

 同時に本田氏は、生活支援ロボットを受け入れるインフラ整備の重要性についても指摘。車を例に挙げ、「道路や交通ルールなどの社会的なインフラが整備されたことで、車文化として定着した。同様に、ロボット技術で豊かな高齢化社会を作るという国家の強い意思がなければ、ROI(return on investment)視点を踏まえた事業化の推進は難しい」(同氏)と強調した。

まずはB to Bから

 パナソニックとしてはまず、「病院での業務支援ロボットといった『B to B』の領域から事業を手掛けた上で、『B to C』の分野にも切り込んでいく」(本田氏)考えという。このうちB to B向けのロボット開発に向け、同社が2010年4月に大阪大学との共同研究講座として「ロボティクス&デザイン 看工融合」を開講したことにも触れた。多岐にわたる看護業務を支援するために、新たな医療福祉ロボット技術の確立などを手掛けているとした。