医療イノベーション推進室長として、事実上、初めて公の場に
医療イノベーション推進室長として、事実上、初めて公の場に
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松本洋一郎氏
松本洋一郎氏
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 内閣官房の医療イノベーション推進室は2012年2月12日、「医療イノベーション推進シンポジウム 革新への挑戦~日本の技術が医療を変える~」を東京都内で開催した。主催者挨拶として、同年1月に新室長に就任した松本洋一郎氏(東京大学 副学長)が登壇。医療イノベーション推進室長として、事実上、初めて公の場に登場した。

 医療イノベーション推進室は、日本発の医薬品や医療機器などを生み出し、実用化する「医療イノベーション」を促すため、国の司令塔組織として2011年1月に発足した。当初、室長にはヒトゲノム解析などで知られる中村祐輔氏(東京大学 医科学研究所教授)が就任したが、同年12月に辞任。その後任として室長に就いたのが、松本氏である。

 松本氏は冒頭、「私が室長に適任かどうかは分からないが、医療の分野にイノベーションを起こす必要があるという認識は共有している」とし、簡単なプレゼンテーションを始めた。

 まず松本氏は、現状の課題として大きく三つの点を示した。すなわち、(1)新技術などの創出の停滞と国際競争力の不足、(2)超高齢化社会の医療ニーズへの対応の必要性、(3)米国・欧州において進むイノベーション政策、である。

 (1)については、かねて課題とされている治療機器の輸入超過の問題に加え、治療機器に比べると日本が強みを持っていた診断機器においても輸出にかげりが見えると指摘した。

 (2)では今後、急性疾患から慢性疾患へと対応の重要度がシフトするとした上で、在宅でのケアの他、移動や食事といった生活面での総合的な対応が必要になるとした。

 (3)に関しては、欧米ではICTを駆使して、医療安全を確保しつつ革新的な製品を導入し、経済発展につなげていくためのイノベーション政策を打ってきていると指摘。我々も急がなければならないとした。

 これらの課題を踏まえ、医療イノベーションの目指すものとして松本氏は、大きく次の3点を掲げた。

 ・医療に関する新しい技術・アイデアを育み、それらを革新的な薬や治療法、医療機器、医療サービスの創生へと効果的につなげる新システムを構築

 ・国民が、妥当なコストで、質が高くより安全な医療や関連サービスを受けられる環境を構築し、高いQOLや健康寿命の延伸を実現

 ・超高齢化社会で先行する日本市場をベースに革新的な製品などを育み、競争力のある医療・高齢化関連産業を創出