日本経済新聞は2012年2月8日付の朝刊で、ルネサス エレクトロニクスと富士通、パナソニックが半導体の主力事業を統合する方向で協議を始めた、と報じた。3社がシステムLSI(SoC)事業を切り出し、産業革新機構が出資して半導体設計会社を設立するという。併せて、半導体を受託生産する新会社を設立する方向とした。

 この報道に対し、ルネサス エレクトロニクスと富士通はそれぞれプレス・リリースを通じてコメントを発表した(ルネサス エレクトロニクスのリリース富士通のリリース)。いずれも「報道された内容は当社から発表したものではなく、決定した事実もない」という趣旨であり、報道内容そのものを否定したものではない。

 「国内半導体メーカー各社にとって、SoC事業の抜本的な改善が大きな課題であることは間違いない」。ある国内半導体メーカーの関係者は、各社が置かれた現状をこのように語る。今回の報道で名前が挙がった3社はいずれも、SoC事業ではデジタル民生機器向けを中心に不振が続いている。

 国内各社はここ2~3年の間に、投資負担の重い先端SoCの製造を外部委託する事業モデルへ転換したが、その効果は表れていない。国内機器メーカー向けのカスタム品(ASIC)を事業の柱としてきた各社が、機器メーカーとともに低迷を続けているのが現状だ。デジタル民生機器の販売価格が下落を続けている中、こうした機器向けのSoCでは、東アジアのファブレス企業などが強みを発揮している。

 2011年の東日本大震災や欧州の経済危機、長引く円高などは、国内半導体メーカーにSoC事業の抜本改革を強いる決定打となる可能性が高い。富士通は上述のプレス・リリースにおいて、「半導体事業改善のためにあらゆる可能性を検討している」ことを認めている。この姿勢は国内各社に共通のものだろう。今回報道された3社による協業は、そうした模索における有力な選択肢の一つになりそうだ。