ソニーの平井氏
ソニーの平井氏
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 ソニーは2012年2月2日、新経営体制についての記者会見を開催した(Tech-On!の第一報)。4月1日付で、代表執行役 社長 兼 CEOには平井一夫氏(現・代表執行役 副社長、コンスーマープロダクツ&サービス事業担当)が就任する。平井氏に対する、記者会見での主な一問一答は以下の通り。

――社長就任の打診は、いつごろどういった形であったのか。

平井氏 少し前から(Stringer)会長が様々なインタビューで、(後継者など)これからのプロセスを進めているという話をしていたが、最終的に(社長という)新しいポジションに就くという話を私が正式に聞いたのは(2012年2月1日に開催された)取締役会の終了後だ。

――平井氏はこれまで、主にゲーム事業と音楽事業に関わってきており、エレクトロニクス事業の出身ではない。エレクトロニクス事業で痛みを伴う改革を進めていくには、社内での反発があると思う。本流出身ではない経営トップとして、どういう改革を実施できるのか。

平井氏 私自身は「PlayStation」のビジネスをかなり長い間、担当してきた。ゲーム事業を支える大きな柱はハードウエアだ。しかもゲーム機は、一度ハードウエアを開発したら、基本的には変えずに長いライフ・サイクルでビジネスを進めなければならない。ハードウエアを発売して、失敗が許されないビジネスといえる。

 こうした厳しいビジネスを進める中で、お客様にどういう機能が喜ばれるか、いかにハードウエアを安くしてお客様にハードウエアを長く提供できるかを議論し、決断してきた。特に「PlayStation3」は、ハードウエアのコストをいかに圧縮するかに焦点を当てて、ビジネスを立て直した。

 さらに、3年前からは「NPSG(ネットワークプロダクツ&サービスグループ)」のプレジデントを務めており、ソニーのエレクトロニクス事業のダイナミックさは経験したつもりだ。これからソニーの舵取りを進めていく中で、エレクトロニクス事業の知識や経験はもちろん大事だが、もっと重要なのは難しい局面で判断ができるかどうかだ。その判断を、筋を通して最後まで実行できるか。その点については、これまでも自分が正しいと思ったことを進めてきたと考えている。

――社長就任後は「大胆な集中と選択」を進めるとしていたが、聖域はないのか。例えば、長く看板事業であるテレビ事業についても、他社との提携もしくは事業そのものの撤退はあるのか。

平井氏 テレビ事業については、2011年11月の決算発表で、今後2年を掛けてどのようにビジネスを立て直すかを説明させていただいた。既に様々なプロセスに着手しているが、一つの大きな結果が(韓国Samsung Electronics社と進めてきた)S-LCD社の合弁解消だ。その他のプロセスについても進んでいる。問題が出てきた場合はその場で軌道修正をしつつ、計画を遂行していく。一度決めたから、(それを今後も)良しとするわけではない。計画については、変更する可能性はある。

 他社との協業については、現時点では具体的なことはない。当然、これからのプランの中で、他社との協業がオプションとして出てくれば、検討する価値は出てくるだろう。

――重点施策の一つとしてテレビ事業を立て直すというが、そもそもテレビ事業にそこまでこだわるのはなぜか。こだわるのであれば、コモディティー化する中で付加価値の落ちない製品作りをどのように進めていくのか。

平井氏 テレビは、お客様が様々なコンテンツをお楽しみいただく中で、家庭の中心にある重要な製品だと考えている。ソニーがこれから新しいコンテンツの楽しみ方を提案していく中で、テレビを通してこれらを楽しむことが増えることはあっても減ることはない。もちろん、モバイル分野での製品も出てくるが、家庭ではテレビが中心になる。

 ソニーのありとあらゆるコンテンツやサービスを楽しんでいただくために、非常に重要な位置を占めるテレビという製品を簡単に撤退する、もしくは事業を縮小するという選択肢はない。お客様にソニーの体験を楽しんでいただく重要なリンクがなくなってしまうからだ。ソニーにとって、テレビは重要な領域だ。

 今後のテレビ開発については、商品力を強化するは当たり前であり、コスト削減やサプライチェーン、オペレーションの見直しも進めていく。これらを組み合わせることで、お客様に評価していただくテレビを出していかなければならない。

――モバイル事業について聞きたい。ソニーはモバイル機器のソフトウエア・プラットフォームとして、米Google社の「Android」を推進している。だが現状は、Android搭載機の事業がうまくいっているとは言い難い。Androidを使ってビジネスで成功できるのか。

平井氏 ソニーのモバイル製品にはAndroid搭載機以外にも、いくつかの製品がある。独自の「PlayStation OS」を採用する携帯型ゲーム機「PlayStation Vita」も、ソニーのモバイル事業戦略の重要な製品だ。これは他社にはないモバイル戦略の一端だと思う。

 Androidという共通プラットフォームを採用した際の差異化に向けては、ソニーの持つさまざまな技術的な資産を活用していく。例えば、デジタル・カメラ「サイバーショット」で培ってきた画像処理や信号処理、「スイング・パノラマ」などのカメラ機能を積極的にスマートフォン「Xperia」シリーズに投入していく。共通プラットフォームを使っても、デジタル・イメージング技術で差異化を図れるだろう。

 加えて、地域によって展開に差はあるが、映像配信サービスの「Video Unlimited」や音楽配信サービスの「Music Unlimited」などのサービスでの差異化も可能だ。さらに、2011年に日本市場に投入した「Xperia arc」や「Xperia acro」では、デザインや使い勝手の良さについて、お客様から高い評価をいただいている。これらソニーの持つ、技術力や商品作りを惜しみなく搭載することで、ソニーならではのXperiaを投入できると考えている。

――会見では、メディカル分野への強化を打ち出した。取り沙汰されているオリンパスとの提携について、どういった状況にあるのか。

平井氏 オリンパスとは以前からメディカル分野に関して、様々な取引をしている状態だ。現状、色んな報道がされているが、今後の提携などについてはコメントを控えたい。