今回のシステムの全体像
今回のシステムの全体像
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 京都大学医学部附属病院(京大病院)とNTTは、関節リウマチ患者の病気の進行度や症状、機能障害の程度をスマートフォンで計測し、医療従事者がリアルタイムに計測情報にアクセスできるシステムを開発した。日常生活における同システムの有用性を確認するため、20~30人の患者にスマートフォンを貸与し、病院外におけるフィールド実験を2012年2月1日から始めた。実証実験は、京大病院とNTTサイバーソリューション研究所が共同で実施する。

 手足の機能に大きな障害をもたらす関節リウマチの患者数は、全国で60万人以上という。しかしリウマチの診断においては、従来のような短時間の外来診察における問診だけで、病気の進行度や症状、機能障害の程度を判断することは必ずしも正確とはいえず、刻々と変わる症状や機能の変化を正確にとらえることが難しいのが現状だった。

 そこで京大病院とNTTは、日常生活において患者がスマートフォンを持っているだけで、歩容(歩いているときの身体運動の様子)や移動距離の測定が可能で、病気の進行度や症状、機能障害の程度を評価できるシステムを開発した。既に2011年4~5月に、NTTが開発した、スマートフォンで動作する歩容解析アプリケーションを用い、京大病院内で関節リウマチ患者の歩容を測定する予備実験を実施した。その結果、従来使用されてきた大型の加速度センサと同等の歩行評価が可能であることや、歩容評価が関節リウマチの進行度や症状、機能障害の程度と相関があることを確認したとする。

 NTTは今回、スマートフォンに搭載されている加速度センサやGPS、ジャイロセンサなどを利用し、歩容解析を実現する技術を開発した。開発に当たり、同社が長年研究を重ねてきたセンサ・データ処理技術や歩行モニタリング技術を応用したとする。具体的には、スマートフォンに搭載された加速度センサが取得したデータから高精度に特徴点を検出することで、歩行の代表点を自動で抽出することを可能にした。これにより、歩行のばらつきや歩行ペース、歩行における左右バランスを計測することができるようになったという。

 今回のシステムを利用すると、患者の歩容データが一定間隔でサーバーにアップロードされるため、電子カルテとリンクすることで、医療従事者が患者の日々の歩容状態を確認できるようになる。患者が定期的に記録した症状や日常生活の状況を、医療従事者が即時に確認することもできる。これにより患者の日々の歩容状態と、関節リウマチの症状などとの関連が明らかになり、関節リウマチの病状把握や症状の軽減、予後の改善、治療の進歩などに貢献できると踏む。

 京大病院とNTTは、今回の実証実験の終了後も、定期的に実証を進めていく予定とする。今後、日常診療の場で本システムの稼働を実現させ、関節リウマチ治療の進歩や発展に貢献することを目指すとしている。