東レ、熱可塑CFRPの強度を高める技術を開発---炭素繊維と樹脂の接着性を改善
東レは、炭素繊維と熱可塑性樹脂の複合材料(熱可塑CFRP)において、両者の接着性を高める技術を開発した(ニュースリリース)。これにより、強度の高い熱可塑CFRPを造れるようになる。既に家電製品の準構造部材に採用されており、同社は今後も家電製品や自動車などでの採用を見込む。
新技術によって造る熱可塑CFRPは、長さが7mm前後の炭素繊維束に樹脂を含浸させた「長繊維ペレット」。ユーザーはこのペレットを射出成形機に投入し、所望の形状に成形する。樹脂に炭素繊維を配合することで、樹脂単体より強度に優れる成形品を得られる(この段階で繊維の長さは平均0.6〜0.7mm程度になる)。
だが、熱可塑CFRPのマトリックス樹脂としてポリプロピレン(PP)やポリフェニレン・サルファイド(PPS)を使用する場合、炭素繊維と樹脂の界面における接着性が低いので、期待していたほど高強度化の効果を得られないという問題があった。界面で材料が剥離(はくり)し、大きな衝撃を受けたときに樹脂だけが破壊されるので、複合材料としての強度がほとんど樹脂の強度だけで決まってしまうからだ。
そこで東レは、炭素繊維と樹脂の両方に接着性を高めるための工夫を盛り込むことによって、複合材料としたときの強度を高めることに成功した。具体的には、ペレットを製造する前の段階で、炭素繊維の表面に有機物を塗布する。一方、樹脂にはこの有機物と化学的に結合する物質を添加し、その上で長繊維ペレットを製造する。この長繊維ペレットを射出成形すると、炭素繊維側の有機物と樹脂側の添加物が結合するため、両者の界面において十分な接着性を確保できる。
東レは、新技術を適用した熱可塑CFRPによって、長繊維ペレットタイプのガラス繊維強化樹脂(GFRP)を置き換えられると見る。炭素繊維はガラス繊維よりも強度が高い上、比重が小さいため、GFRPと同等の強度を確保しつつ、並行して軽量化することが可能だ。例えば、マトリックス樹脂がPPの場合、炭素繊維を20質量%配合した熱可塑CFRPにより、ガラス繊維を40〜50質量%配合した熱可塑GFRPと同等の強度が得られ、さらに20〜30%の軽量化が可能になる。ただし、構造部品単体の材料コストは、軽量化による材料使用量の減少分を考慮しても熱可塑CFRPの方が高くなるため、ユーザーが熱可塑CFRPを採用するには、周辺部品も含めた設計の改良が不可欠になりそうだ。
熱可塑CFRPのマトリックス樹脂としてポリアミド6(PA6)やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)を使用する場合は、前述の接着性の問題はないため、東レではこれまでPA6やABSを使用した熱可塑CFRPの長繊維ペレットを製品化していた。今後は、新技術によってPPやPPSを使用した熱可塑CFRPの長繊維ペレットもラインアップに加える。
なお東レは、2012年2月15〜17日に開催される「nano tech 2012(第11回ナノテクノロジー総合展・技術会議)」において、新技術の成果を展示する予定。












