この何でも価格が下がる時代にあって、シャープの米国の大型テレビ(60型以上)は何と前年の5倍も売れている。2010年は20万台だったのが、2011年には何と5倍の100万台に伸ばした。これは驚異だ。台数ベースでは米国市場の3%ながら、金額ベースでは10%にもなる。
かつて、シャープは米国でナンバーワンの液晶テレビ・メーカーだった。それが韓国のSamsung Electronics社やLG Electronics社の台頭と逆比例するように力を落とし、2010年まではテレビCMも打てない状態だった。尾花打ち枯らしていたのだが、実は当時でも65型だけはコンスタントに売れていた。
「ここには何かあるぞと、ピンと来たんです」とシャープの道川直幸氏(AVシステム事業本部第2事業部 事業部長)は言う。「いまだ大型のリア・プロジェクタが売れている米国ですから、画質の良い液晶の大画面テレビは、大きな市場になるかもしれない、と」。
競合他社に60型台の製品はあるが、70型台、80型台は皆無。そこで、シャープは2011年に60型台に11モデル、70型台に6モデル、80型に1モデルの合計18モデルを一気に投入し、その結果、冒頭の嚇々(かっかく)たる成果を上げた。
2012年はこの勢いでさらにラインアップを拡張。60型台に9モデル、70型に9モデル、80型に3モデルの合計21モデルを投入。シャープは「オンリーワン・カンパニー」を標榜しているが、他社はマザー・ガラス基板の制約もあり、これほど大きい画面サイズにはなかなか本格的に参入できない。
いまや60型以上のテレビでは世界最大のメーカーだ。日本代表としての米国市場での頑張りを期待したい。