2012年のCESが開幕へ
2012年のCESが開幕へ
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 民生機器関連で米国最大の展示会「2012 International CES」(主催はCEA:Consumer Electronics Association)が米国時間の2012年1月10日に開幕する。前々日の8日,開催地の米国ネバダ州ラスベガスは青空が広がった。会場の設営や参加者の到着で、展示会の開幕に向けた熱気が増しつつある。2日後の開幕に先立ち、東芝が日本の報道関係者向けに米国で発売する液晶テレビやタブレット端末の新製品、米国で参入するスマート・コミュニティ事業の概要を公開したほか、報道関係者向けに展示会の出展者などが新製品をアピールするイベントが開催された。

 開幕前日の9日には,パナソニックやソニー,韓国のSamsung Electronics社,LG Electronics社など大手エレクトロニクス・メーカーが記者会見を開き、2012年の戦略や、新製品などについて発表する見込みだ。同日の夕方には、米Microsoft社CEOのSteve Ballmer氏が基調講演に登壇する。CESでは、会長のBill Gates氏など同社のCEOが長年開幕の基調講演を務めてきたが、今回が最後になるもようだ。

多様化するタブレット端末、有機ELテレビも

 今回のCESでは、この1年ほどで実現に向けた動きが本格化し始めた、家庭内の機器を連携させる技術やサービスの動向が大きな焦点になりそうだ。世界的に普及が急ピッチで進むスマートフォンやタブレット端末と大画面テレビの連携や、省エネ化を目指す家庭内の電力管理などである。これらを実装するアプリケーション・ソフトウエア(アプリ)や、ユーザー・インタフェース技術、機器間をつなぐインタフェース技術、省エネ用ガジェットなどが続々と登場する可能性が高い。

 携帯端末では、四つのCPUコアを内蔵した、いわゆる「クアッド・コア」のマイクロプロセサを搭載した高性能機種が登場しそう。Microsoft社の次世代OS「Windows 8」を載せたタブレット端末も注目の一つになりそうだ。同OSは、パソコンに加えてタブレット端末での利用を前提にタッチ・パネル操作への対応を強化している。従来のx86プロセサだけではなく、スマートフォンやタブレット端末で事実上の標準になっているARM系のSoCにも対応する。Apple社の「iOS」、Google社の「Android」に加え、OSにもう一つの軸が加わることになる。画面サイズや操作性、サービス連携なども含めた、タブレット端末の多様化が進みそうだ。

 テレビでは、大画面の有機ELテレビが登場しそうだ。LG Display社は2011年12月26日に55型のテレビ向け有機ELパネルを発表した。これを搭載した薄型テレビをLG Electronics社が公開するとの見方が強い。同様の画面サイズの薄型テレビはSamsung社も開発を進めている模様で、有機ELテレビの開発競争が激しさを増している。2011年に東芝が製品化した、4K×2K画素の表示機能を備える「4Kテレビ」でも、テレビ・メーカー各社の対応が注目される。

 インターネット接続機能を備えた「スマート・テレビ」では、米Google社や米Intel社、ソニーなどが共同開発したソフトウエア基盤「Google TV」搭載機を複数メーカーが公開する見込みだ。米VIZIO社が製品化を明らかにしているほか、韓国メーカーも試作機や製品を出展するとの観測が強まっている。

民生機器の世界市場は1兆米ドル規模に

 今回のCESでは、カメラ関連の展示会「PMA」も同時開催される。デジタル・カメラ関連の新製品も続々と登場しそうだ。富士フイルムが製品化を公表しているレンズ交換式のミラーレス・カメラなどが姿を現すことになるとの見方が強い。

 CESを主催するCEAによれば,世界の民生機器の市場規模(消費者が民生機器に費やす金額)は、2012年に前年の9930億米ドルから5%増え、初めて1兆米ドルを超える見通し(予測は調査会社の米GfK Retail and technology社)。スマートフォンや新興国需要などが貢献する。2011年は景気後退の影響で総じて不振だった先進国に代わって、アジア太平洋地域や東欧、中欧の新興国の伸びが牽引し、市場規模は前年比で8%増加したという。