超低電圧デバイス技術研究組合(Low-power Electronics Association & Project:LEAP)は、1回目の成果報告会(図1)を2011年12月15日につくば国際会議場で開いた(LEAP関連ページ1)。LEAPは、低炭素社会の実現を担う超低電圧動作のデバイスを研究開発するプロジェクトである(同2)。

図1●講演会(左)とポスター・セッション(右) Tech\-On!が撮影。
図1●講演会(左)とポスター・セッション(右)
Tech-On!が撮影。
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 2010年5月21日の設立で、現在の組合員は荏原製作所、東京エレクトロン、東芝、日本電気、日立国際電気、日立製作所、富士通、富士通セミコンダクター、三菱電機、ルネサスエレクトロニクスの10社である。経済産業省委託の「低炭素社会を実現する超低電圧デバイスプロジェクト」を2010年7月から始めた。このプロジェクトは2011年3月に、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)へ移管された(最終年度は平成26年度)。同プロジェクトは、「つくばイノベーションアリーナ:TIA」の中核プロジェクトの一つだという。

0.4V動作を狙う

 LEAPでは、超低電圧を0.4Vとして、研究を進めている。低電圧動作のデバイスを開発する研究はLEAP以外のさまざまな場所でも行われており、目標の動作電圧も研究によって異なる。今回の成果報告会の発表によれば、Si-CMOSデバイスでは、電源電圧Vddが0.4V付近でエネルギー効率が最大になるという。しかし、この電圧では速度が遅くて、多くの用途では使い物にならないのが現状である。そこで、LEAPでは0.4Vでも実用的な動作速度を得ることを狙って研究を行っている。

図2●取り組む五つのテーマ(上)とスケジュール(下) LEAPのデータ。
図2●取り組む五つのテーマ(上)とスケジュール(下)
LEAPのデータ。
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図3●配線層(BEOL)はつくばで製造 LEAPのデータ。
図3●配線層(BEOL)はつくばで製造
LEAPのデータ。
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 ただし、LEAPでは、いわゆるMore MooreやMore than Mooreの合言葉に代表される“最高速度の向上”を狙っているわけではない。それよりも、効率化を重視しており、効率が下がらないようにしつつ、速度を上げることを狙うという。現在、LEAPでは五つのテーマで研究が進んでいる(図2)。このうち、三つはLSIの配線層(Back-End of Line:BEOL)に集積可能なデバイス(BEOLデバイス)、残り二つは集積化基盤技術と呼んでいるものである。

 三つのBEOLデバイスは、(1)磁性変化型不揮発性メモリ、(2)相変化型不揮発性メモリ、(3)原子移動型の不揮発性スイッチング素子である。一方、集積化基盤技術は、(4)3次元カーボンナノ配線、および(5)低バラつきを特徴とするロジック回路向けのトランジスタからなる。なお、三つのBEOLデバイスは、産業技術総合研究所の「つくばスーパークリーンルーム」で試作する(300mmウエハーを使う65nmノードのプロセス)。集積化基盤技術の二つなど、BEOLより下の層(CMOS層と呼ぶ)は、外部のIDMやシリコン・ファウンドリで作ることになる(図3)。