記者会見の様子
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左が羽根田商会 代表取締役の佐藤祐一氏、右がテムザック CEOの高本陽一氏
左が羽根田商会 代表取締役の佐藤祐一氏、右がテムザック CEOの高本陽一氏
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記者会見場を通りかかった子供が、テムザックのロボットと戯れていた。子供はドラえもんが描かれた上着を着ていた。
記者会見場を通りかかった子供が、テムザックのロボットと戯れていた。子供はドラえもんが描かれた上着を着ていた。
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 ロボット・ベンチャーのテムザックと羽根田商会は2011年12月22日、台湾tmsuk formosa(天目時科)社の設立を記念した記者会見をTaipei Main Station(台北車站)で開催した。tmsuk formosa社は、原価低減に向けたサプラヤーの見直しや製造委託の管理、および羽根田商会が7割、テムザックが3割出資したシンガポール法人に対する製品出荷などの業務を担う。

 「5年ほど後に台湾法人の年間売上高を100億円ほどにしたい」(羽根田商会 代表取締役の佐藤祐一氏)という。直近でtmsuk formosa社が扱う製品は、車いすに似た「RODEM」や歯科医療のトレーニングに向けた「DENTAROID(昭和花子さん)」、急病人の症状把握に向けた「Pre-hospitalcare Robot」である。

――なぜ台湾なのか?テムザックはこの2~3年、韓国の政府や企業と協力する姿勢を見せていた。2008年4月には知識経済部と優遇措置などに関する覚書まで交わした

テムザック CEOの高本陽一氏 韓国サイドと視点を共有できなかったからだ。韓国の大企業はいわゆる”40歳定年制”(兵役と大学院を終えてから40歳まで間に、同世代中で際立った成果を上げた人だけが会社に残り、他は退職する)がある。このために韓国側の人物がプロジェクトの途中で離脱したり、ノウハウや情報が拡散してしまった。

――しかし台湾も、日本に比べれば人材の流動性が高い。

高本氏 確かにそうだが、悪影響を抑えられるはずだ。台湾人のメンタルあるいは心根は、どの国・地域の人々よりも日本人に近い。しかも台湾には巨大なEMS/ODM企業から精密関連の中小メーカーまで、多様で強力な企業が集積している。このチャンスを生かさない手はない。韓国から依然として声を掛けていただけることは本当にありがたいが、我々は台湾に集中したい。

――工作機械や光学機器のメーカーが台中市などに集まっているとはいえ、台湾企業の大半は民生機器産業に属している。開発期間が1年を超えたり、量産台数が万のケタに達しなかったりする商品を、手掛けたいと思う台湾企業は少ないのではないか。

高本氏 それでも見つけるしかないというのが、我々の決断だ。昨今の円の強さのせいもあるが、台湾におけるモノやヒト・サービスの費用対効果は、実に高い。日本に閉じこもってなんていられない。

羽根田商会の佐藤祐一氏 台湾の政府系研究機関であるITRI(工業技術研究院)と、我々は良い関係にある。ITRIに対して技術を提供する代わりに、パートナーと成り得る企業や人々を紹介してもらえるはずだ。

――台湾にどのくらいの経営資源を置くのか。日本拠点の役割は、今後どう変わるのか? 高本氏はかねて「規制が厳しすぎる」と述べていた。

高本氏 日本人の技術者/研究者を2人、台湾法人に配置した。現場がすんなり受け入れたわけではないが、必要だから引っこ抜いた。これに加えて3人の台湾人に非技術系の仕事をしてもらっている。将来の人員規模は分からない点もあるが、台湾人の技術者/研究者を増やし、台湾からの出資も受け入れるつもりだ。それらを実現した後でも、日本拠点は必要だろう。ロボット工学における世界最高水準の人材やアイデアを供給してくれるからだ。