日本テキサス・インスツルメンツの財津氏

財津 この説明でも、ちょっと高尚ですね(笑)。それでは私は実務レベルの感覚で定義します。デジタル制御電源は、デジタル・インタフェース(例えばPMBus)を備えた電源と、フルデジタルの電源の二つに分けられると考えています。

 フルデジタル電源とは、デジタル・インタフェースの採用に加えて、制御ループをアナログの補償器ではなく、デジタルの補償器で構成したもの。このデジタル補償器にも二つあり、一つはハードウエア・ベースのもの、もう一つはソフトウエア・ベースのものです。これが、先ほどの前山さんの説明につながります。

——つまり、フルデジタル制御電源とは、「デジタル・インタフェース+フィードバック・ループのデジタル演算」という理解で良いでしょうか?

財津 その通りですね。もっとも、補償器だけをデジタル化するという取り組みはあまり存在しません。心臓部をデジタルにするなら当然、PMBusなどのデジタル・インタフェースが搭載されます。

TDKラムダの前山氏

前山 ただし、電源の制御をデジタル化する前、つまりデジタル化するにはプロセサのパフォーマンスが不十分だった時代には、アナログ制御の電源に、わざわざマイコンを接続して、通信のみデジタルで実行するという製品がありましたよね。

財津 それは、デジタル・インタフェースを備えたPOL(point of load)コンバータという品種で、デジタル制御電源の一つの分類になっています。

——つまり、フィードバック・ループの制御方式はアナログ制御で、外部との信号やりとりに向けてデジタル・インタフェースが搭載されている電源もデジタル制御電源と呼ぶという理解でいいですか?

財津 はい。それも一般的には、デジタル制御電源と呼んでいるようです。

鈴木 そうですね。実際のところ、デジタル制御電源の中には、そういったものが多いです。ただし、当社(ベルニクス)ではデジタル制御電源とは呼んでいない。「デジタル制御」と呼んでいる。電源はあくまで電源(電力変換器)なので。通常、電源の周囲にはさまざまなインタフェースが付加されます。それらは単なる回路であって、電源には含まれていない。従って、フィードバック・ループの信号処理をデジタル化したものがデジタル制御電源。そう考えています。

財津 少し、ややこしくなりましたが、この二つに分けられると言うことで良いのではないでしょうか。つまり、「フルデジタル(デジタル・インタフェース+デジタル制御)」と、「デジタル・インタフェース+アナログ制御」の二つです。