パナソニックは、2011年10月31日の第2四半期決算発表の場で、ディスプレイ・デバイス事業と薄型テレビ事業の構造改革について発表した。

 ディスプレイ・デバイス事業と薄型テレビ事業関連の構造改革の要点は、(1)PDP生産体制の縮小(尼崎第5工場の生産休止および同第3工場の上海移転の中止と、それに伴う設備の廃棄)、(2)液晶パネル生産体制の見直し(茂原工場の休止および姫路工場の減損)、(3)セット事業における工場の集約(主に国内工場)、(4)システムLSIを中心とした半導体事業のリソース・シフト(ファブレス化、開発のスリム化)となっている。

 それぞれのポイントにおいて、パナソニックの現状と方針転換が市場に与える影響を考察する。

(1)PDP生産体制の縮小

 現在PDPモジュールを生産するメーカーは、パナソニック、韓国Samsung SDI社、韓国LG Electronics社、中国Changhong(長虹)系のCOC Display Devices社の4社となっている。各社のPDPモジュール生産規模は2011年見通しで、Samsung SDI社が600万枚強、パナソニックが500万枚前後、LG Electronics社が450万枚弱、COC社が100万枚強である。パナソニックはSamsung SDI社に次ぐ2番手で、LG Electronics社と併せて市場を3分する状況となっている。

 パナソニックは、2010年のピーク時には月産70万枚近い生産をしていたが、足元の生産ペースはピーク時の半分程度(月産35万枚前後)になっていると見られる。その他のメーカーでは、Samsung SDI社が月産50万~60万枚のPDPモジュール生産をしており、LG Electronics社はパナソニックと同等規模(月産35万~40万枚)、中国のCOC社は月産10万枚程度の生産をしている。

 2010年は、LEDバックライト搭載の液晶テレビの本格普及によって、大型液晶テレビの価格が比較的高値で推移していた。しかし、2011年は市場停滞と大型基板を保有する工場の積極稼働により60型品までも大幅な値下げ競争に突入しており、PDPテレビはマーケットを奪われると共に、採算確保に追われる状況が続いている。Samsung SDI社は2011年夏までに償却を完了、LG Electronics社はすでにPDPモジュール生産ラインの償却を終えているのに対して、パナソニックは最新鋭の尼崎第5工場を2010年に立ち上げたばかりであることから、固定費などコスト面は不利な状況にあった。生産ラインの償却をほぼ終えて高稼働で推移している韓国のPDPメーカーも、現在は採算ラインをどうにか確保している状況である。大規模投資の償却を抱えるパナソニックは厳しい状況が続いていた。