「レストヴィラ上溝」の内覧会で、介護事業に参入した理由やこれからの夢などを入居予定者に語る渡邉美樹ワタミ会長。
「レストヴィラ上溝」の内覧会で、介護事業に参入した理由やこれからの夢などを入居予定者に語る渡邉美樹ワタミ会長。
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「ワタミが居酒屋4店舗を経営していた時にアルバイトで働いていたことがきっかけで入社」などのエピソードを披露しながら入居予定者の心をつかむ、清水邦晃ワタミの介護社長。
「ワタミが居酒屋4店舗を経営していた時にアルバイトで働いていたことがきっかけで入社」などのエピソードを披露しながら入居予定者の心をつかむ、清水邦晃ワタミの介護社長。
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ホームの各フロア廊下にiPadを設置。壁から外して持ち歩くことも可能だ。「タッチ式で項目を選択するだけなので、入力の負担が少なく便利」と語る、レストヴィラ上溝ケア主任の鈴木拓磨さん。
ホームの各フロア廊下にiPadを設置。壁から外して持ち歩くことも可能だ。「タッチ式で項目を選択するだけなので、入力の負担が少なく便利」と語る、レストヴィラ上溝ケア主任の鈴木拓磨さん。
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システムのトップ画面。入浴や食事などの時間管理や、入居者の健康状態管理にも使う。
システムのトップ画面。入浴や食事などの時間管理や、入居者の健康状態管理にも使う。
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フリーコメント欄も定型文を選択可能。「自由記入だと、書き込む内容を考え込んでしまうため、定型文を用意した」(浅井部長)。
フリーコメント欄も定型文を選択可能。「自由記入だと、書き込む内容を考え込んでしまうため、定型文を用意した」(浅井部長)。
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レストヴィラ上溝の外観。従来よりも共有スペースの広さを抑えるなどの工夫で入居一時金を380万円に設定したという。
レストヴィラ上溝の外観。従来よりも共有スペースの広さを抑えるなどの工夫で入居一時金を380万円に設定したという。
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 介護付き有料老人ホームなどを展開するワタミの介護は、ホーム内のオペレーションや入居者の健康状態を管理するシステムを開発、導入する。2011年11月にオープンする介護付き有料老人ホーム「レストヴィラ上溝」(神奈川県相模原市)からシステム運用を開始。今後開設するホームには全店、現在70ある既存ホームには2012年から順次、同システムを導入する。

 ホームでは各フロアにノートパソコン1台と「iPad」を数台配置し、スタッフがいつでも管理システムへ入力したり、データを閲覧できるようにする。

技術と科学で介護を変革

 「ワタミはこれからの介護を、技術と科学を使って変えていく」。2011年10月26日に実施したレストヴィラ上溝の内覧会で、ワタミグループの中核会社ワタミの渡邉美樹会長は、こう力説した。ワタミが介護事業に参入した時から「おむつゼロ、車いすゼロ、特殊浴ゼロ、経管食ゼロ」を目標に、サービスの質向上に取り組んできた。今後はそれらに、技術や科学を最大限活用するという。

 ワタミの取締役を兼ね、介護事業の立ち上げから担当してきた清水邦晃ワタミの介護社長は、「時間のコントロール、これが介護ビジネスに最も重要」と語る。より質の高いサービスを提供し、かつコスト管理も徹底するには、「業務内容の一覧性を高め、スタッフが手間をかけずに管理できる方法が必要」(同)という。そこで導入したのが、パソコンやiPadを入力端末に使うシステムだ。

1ホーム当たりの初期投資は250万~350万円

 導入するシステムは、ソフトウエア開発などを手掛けるティアックシステムクリエイトと共同で開発。ワタミの介護が負担した開発費用は約6500万円だ。ホームの初期投資は、その施設の規模によって異なり250万~350万円。機器配置の基本パターンは、1フロアにノートパソコン1台、iPadが2台だ。

 パソコン、iPadどちらからも同じ作業ができる。パソコンだけでなくiPadも採用したのは、「パソコンより低価格なこと」(開発を担当する経営管理部の浅井康平部長)が最大の理由。スマートフォンも検討したが、入力しやすさでスレート型製品が勝った。「話題性もあり、スタッフが喜んで使いそう。アプリケーションも豊富なので入居者とのレクリエーションにも活用できそう」(同)との判断でiPadにしたという。

 各ホームで入力したデータは本社が用意するサーバーで管理。外部につながらないイントラネット上ですべての作業を行うので、セキュリティー対策も万全だという。
 入力、管理するのは「排泄」「機能訓練」などの介護項目と医療項目の合計23項目。それぞれを入居者別、時間別に閲覧、管理できる。入力のほとんどは選択式。フリーのコメント欄も典型的なコメントをあらかじめ用意し、選択できるようにしてある。

 従来はこれらの項目をスタッフが手書きで記録し、その後、必要な項目は本部とつながるシステムにパソコンから入力していた。「手入力はミスの原因にもなるし、時間がかかる。ここを合理化することで、各スタッフが入居者ケアにあてる時間をさらに増やすことを狙った」と清水社長は言う。

 システム開発は昨年から準備し、今年4月から本格化、約半年で導入した。「今後は、作業効率化だけでなく、入居者の家族との情報共有、スタッフの人事考課にも活用できるよう、開発を続けたい」(清水社長)としている。