東京ガス 技術開発本部 商品開発部 通信・メーター開発G グループマネージャーの古沢 肇氏
東京ガス 技術開発本部 商品開発部 通信・メーター開発G グループマネージャーの古沢 肇氏
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 通信機能をメーターに組み込んで、計測値を遠隔集計したり、宅内の家電機器と無線接続してHEMSに活用するというコンセプト「スマートメーター」が話題を集めている。なかでも日本国内では、ガス事業者の取り組みが活発だ。都市ガスやLPガス事業者などは、日本国内のガス用スマートメーターの通信仕様を統一しており、今後実証試験などが始まる予定である(テレメータリング推進協議会のページ)。主導的に取り組んでいる東京ガスは、無線通信のための送受信ICを低コストで入手するため、米IEEE802で通信仕様の標準化を後押ししてきた(Tech-On!の関連記事)。東京ガスで、ガス用スマートメーターの通信仕様開発に取り組む、技術開発本部 商品開発部 通信・メーター開発G グループマネージャーの古沢 肇氏に話を聞いた。


――東京ガスは、ガスメーターで利用する通信方式の、国際標準化などに熱心に取り組んできた。IEEE802では、ガスメーターなどのユーティリティ機器に向けた低消費電力の無線方式「IEEE802.15.4g」仕様の成立を実現させた。海外での、メーター向け通信方式の標準化に、積極的に取り組んでいる理由は何か?

古沢氏 日本のメーターのメーカーや通信機器メーカーに、もっとグローバル市場で活躍してもらうためである。通信仕様が標準化され、そこに日本の技術が使われれば、日本のメーカーが海外で販路を拡大しやすくなる。こうなれば、大量生産でメーターの価格が安くなることが期待できる。ひいては、我々がガスメーターを調達する際に、低コストで入手できるようになるというものだ。

 我々都市ガス事業者やLPガス事業者は、テレメータリング推進協議会の下、ガスメーターと通信アダプタを接続する専用通信インタフェース「Uバス」を規格化している。このUバス経由でメーターに接続する通信アダプタにはさまざまな伝送手法を使えるが、特に電池駆動のガスメーターに向いた通信手法をIEEE802に提案してきた。それが、「IEEE802.15.4g/4e」という物理層/MAC層規格として固まりつつある。このICが低コストで入手できれば、メーターのメーカーも通信対応製品を作りやすくなる。これを実現するため、海外での国際標準化に取り組んできた。


――東京ガスが利用する予定の「IEEE802.15.4g/4e」規格に準拠した無線ICは、既に市場に出回っているのか?

古沢氏 主要な半導体メーカー各社が、サンプル出荷を始めつつある。15.4g仕様のドキュメントが完成するのは2012年以降だが、仕様の大枠は固まっているため、半導体開発は進められる状況にある。恐らくドラフト仕様準拠のICを、まずは実証実験などに使っていくことになるだろう。


――テレメータリング推進協議会で規定した仕様は、都市ガスやLPガスだけでなく、水道や電力のメーターでの利用も視野に入れている。こうした、他業界への導入の動きは広がっているか?

古沢氏 まずはガス事業者の採用が中心となる。水道メーターに関しては、あくまでも地方自治体の管轄事項となることから、今のところ採用の動きは見えていない。また電力メーターの場合、ガスメーターのように「内蔵電池で10年駆動する」といった、低消費電力への厳しい要求は無い。このため、我々の開発した低消費電力型の無線方式には、今のところ採用の動きはなさそうだ。

 しかし将来、電力メーターに関しても消費電力を低減する必要が出てくれば、採用される可能性もあるかもしれない。例えば、我々が利用する予定のIEEE802.15.4g準拠の無線ICは、今後大量生産によって価格が安くなることを期待できる。こうなれば、電力事業者なども、コストの低い無線ICの一つとして、位置づけることが可能になるかもしれない。


――東京ガスは、こうしたシステムをいつごろ導入開始するのか?