新機種「X10」を手にする古森社長(右)と、CMに登場する本木雅弘さん
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10月22日に発売する「X10」。価格は7万円前後になる見込み
10月22日に発売する「X10」。価格は7万円前後になる見込み
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 富士フイルムは、ミラーレス方式のレンズ交換式デジタル・カメラ(ミラーレス・カメラ)を2012年春に製品化する。2011年3月の発売後、人気を博しているコンパクト型の高級デジタル・カメラ「X100」と同じ「Xシリーズ」として投入する。同年10月5日に開催した同シリーズの新機種「X10」の製品発表会で、同社代表取締役社長兼CEOの古森重隆氏が明らかにした。

 X100は日本での販売価格が12万8000円ほどと高額ながら、発売後の半年で販売台数が7万台に達し、2011年内には10万台の大台に乗る見込み。高級コンパクト機という新しいジャンルを確立した。

 2012年春に発売するミラーレス機は、この高級路線を推し進めた機種になるようだ。古森社長は「35mm判の撮像素子をしのぐ高画質を実現する」と、キヤノンやニコンなどが得意とするレンズ交換式の一眼レフ・デジタル・カメラへのライバル心を表に出した。

 今回発表した新機種「X10」に搭載された新型のCMOSセンサは、対角の寸法が11mmの2/3型。ミラーレス機では、このセンサよりも大型の撮像素子を搭載することになる模様だ。レンズマウントについては、「まだ話せない」(富士フイルム 取締役 常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏)と多くを語らないが、独自マウントを採用する可能性も高そうだ。

 ミラーレス機では、2011年10月に一眼レフ大手のニコンが参入するなど、大手デジタル・カメラ・メーカーによる競争が激化している。富士フイルムは高級路線を持ち込むことで独自の世界を展開し、一眼レフ・カメラの利用者を取り込みながら、新たな利用者層を広げたい考えのようだ。「後発なので、もちろん他社にはないメリットを持たせた製品になる」と、古森社長は話す。

一眼レフの牙城を意識、戦いは新ステージに

 樋口・電子映像事業部長は、ミラーレス機の投入について「一眼レフの牙城を意識している」と静かに意気込みを見せた。「一眼レフ・カメラは、やはりサイズが大きい。同じレンズ交換式で、小さく、便利な商品があれば、消費者は次第にそちらを選ぶようになると見ている」。

 富士フイルムは、3年ほど前からデジタル・カメラ事業の改革を進めてきた。低価格品を核にした新興国市場の攻略を足掛かりに製品ラインアップを再構築したことが奏功し、コンパクト機分野での市場シェアは3年前に比べて約2倍の12%にまで上昇した。低価格機から高級機種までずらりと並ぶ同社の製品群を構成する、最後のピースがミラーレス機だ。

 ミラーレス機への参入は、これまでの改革で蓄えた体力と開発力をぶつける作業になりそうだ。交換レンズなどのラインアップをそろえ、撮影システムとしてのメンテナンスを続ける長期的な投資を決断したことを意味するからである。

 レンズ交換式は当たれば大きな収益につながりやすいだけに、競合各社共に力が入る分野。価格下落が急なコンパクト機とは異なる形の長丁場の熾烈な戦いが待つ。「やるからには皆さんが納得するものを高級バージョンでやっていく」。デジタル・カメラ事業を率いる樋口氏は決意表明した。その詳細は、2012年1月に米国で開催される「CES」で披露される予定だ。