米Microsoft社は、2011年9月13日から開催中のイベント「BUILD」において基調講演を行い、次期Windows OS「Windows 8(開発コード)」の詳細について解説した。講演には、同社 President of the Windows DivisionのSteven Sinofsky氏、Corporate Vice President, WindowsのJulie Larson-Green氏らが登壇した。
講演ではWindows 8について、「Windows 8 Experience」、「Metro style platform and tools」、「Hardware Platform」、「Cloud services」の四つの領域に分けて、それぞれの担当者が解説した。
タブレット端末に向けてタッチUIを導入
Windows 8では、タッチ操作を前提にした「Metro style」のUIが導入されている。Metro UIは「Windows Phone 7.5」で導入されたタイル状のUIであり、基調講演ではこの新しいUIの動作、およびそのアプリケーション開発について説明の大半を費やした。
Metro styleの中核をなすタイルは、アイコンのようなランチャーとしての役割に加えて、ウィジェットのようなアプリの情報を表示する機能も持つ。さらに両社を融合させたような役割も備える。Windows 8では従来型のデスクトップも併存しているが、その切り替えもデスクトップへのタイルをタップすることで行う。
アプリケーションは基本的にフルスクリーンで表示される。従来のデスクトップUIのように、デフォルトの状態ではUIのコントロールは表示されない。画面の左右の端からのワイプ動作はシステム向け、上下の端はアプリケーション用に割り当てられている。デスクトップ・アプリケーションのようなウィンドウの重なりは許容しないポリシーになっており、複数アプリケーションを扱う際は、「side by side」により画面を分割することで表示する。
ログイン方法についても、タッチUI向けに新しいアプローチを導入した。「picture password」という機能により、ロック画面上において、ユーザーが設定した画像の中の複数箇所を決めた通りにタップするとログインできる。
Metro StyleアプリはIE10のエンジン上で動作
Microsoft社は、Metro Styleのアプリケーションに向けて新たに「WinRT(runtime)」と呼ぶAPIを導入した。すべてのMetro Styleアプリケーションは、このWinRT上で動作する。基本的にHTML5とJavaScriptで実装し、実行環境としてはInternet Explorer 10と同じエンジンが採用されている。HTML5とJavaScriptを中核に据えているという意味では、少なくともMetro Styleの部分についてはHP社の「webOS」(HP社が買収したPalm社が開発)と似たような位置付けといえる。
JavaScriptコードの中からはWinRTのAPIを呼び出すことで、ローカルのストレージやクラウド・サービス上にあるファイルを選択できるようになっている。なお、Metro Styleアプリケーションは、HTML5/JavaScript以外にも、C++、C#、Visual Basic、XAMLなどでも開発することができる。
Windwos 8ではARM版が投入されるが、上記のような実行モデルを採用していることで、単一のアプリケーションがすべてのハードウエア・プラットフォーム(x86系、x64系、ARM系)で動作するようになる。
Windows 8では、「Windows Store」と呼ぶアプリケーション・ストアが用意される。スマートフォンで一般的なネットワーク経由によるアプリケーション配布をWindowsでも採用した形だ。Visual Studioの次期版である「Visual Studio 11」でMetro Styleアプリケーションを開発すると、IDE上から直接、Windows Storeにパッケージをアップロードすることができる。Microsoft社でセキュリティ・テストなどの審査を経た後、Windows Storeに公開されるという仕組みである。
起動時間やメモリ・フットプリントを大幅に低減
Windows 8では起動時間も大幅に短縮した。ハイバネーションとコールド・ブートを組み合わせたハイブリッド型の起動プロセスを採用することで、ハードウエアの構成にもよるものの8秒ほどで起動できる(Tech-On!関連記事)。
メモリ・フットプリントについても削減した。Windows 7 SP1において404Mバイト(32プロセス)だったものが、Windows 8では半分程度の281Mバイト(29プロセス)となった。
Windows 8のDeveloper Preview版を一般公開
基調講演の中で聴衆から最も大きな歓声が上がったのが、数千人のBUILDへの参加者にタブレットPCを配布するとSinofsky氏が発表したときだった。配布端末は韓国Samsung Electronics製で、Windows 8 Developer Preview版を搭載する。開発環境としてVisual Studio 11 Express、GUIなどのデザイン・ツールとして「Expression Blend 5」、Metro SDK、サンプル・アプリケーションなどを搭載する。
Windows 8 Developer Preview版はアクティベーションの仕組みを設けていない。現地時間9月13日の20時より同社のWebサイトから一般公開し、参加者以外もダウンロードできるようにした。
今回配布されるWindows 8はDeveloper Preview版だが、今後はベータ版、RC(release candidate)、RTM(release to market)といったマイルストーンを経て、2012年ころに発売に至るとみられる。