2011年9月5~6日に中国・北京で開催された「FPD International CHINA 2011/Beijing Summit」の2日目の基調講演では、中国、日本、台湾を代表する研究機関やメーカーなどから、様々な発表が行われた。

Ouyang Zhongcan氏
中国科学院院士のOuyang Zhongcan氏

 2日目の基調講演は、まず中国科学院院士のOuyang Zhongcan氏が登壇した。中国科学院は、中国のハイテク・自然科学の最高研究機関である。Ouyang氏は講演で、液晶材料やTFT液晶ディスプレイの基礎研究の重要性を訴えた。「液晶産業で先行する日本・韓国・台湾に比べて中国は基礎研究に対する政府の支援が不足している。国際学会での発表件数も少なく、学会の中心メンバーの多くも日韓台の出身者で占められている」と、同氏は警鐘を鳴らす。そして、中国の液晶産業を発展させるためには「基礎研究の強化が欠かせない」と指摘した。日本の中小型ディスプレイの統合会社「ジャパンディスプレイ」についても、同氏は言及した。有機ELを含めた中小型分野の発展につながる動きであり、「中国にとってチャンス」(同氏)と述べた。

増井俊之氏
慶應義塾大学 環境情報学部教授の増井俊之氏

 続いて、慶應義塾大学 環境情報学部教授の増井俊之氏が登壇した。同氏は、誰もがいつでもどこでもコンピュータやインターネットを活用する時代が近づいており、ユーザー・インタフェース技術が重要性を増していくと指摘した。こうしたユーザー・インタフェース技術の最新の研究事例として、台所に設置されたディスプレイを足などで操作する事例や、ケースに入ったままのCDを台の上に載せるだけで音楽を聴けるようにした事例などである。増井氏は、特に小型ディスプレイを使ったユーザー・インタフェース技術が重要になるという考えを示し、テレビやパソコンの画面に表示された画像をスマートフォンの画面にコピー&ペーストして、さらにその画像を別のテレビやパソコンの画面にコピー&ペーストできるようにした事例を示した。

高柳幹彦氏
パイオニア カーOEM事業部 商品企画部 部長の高柳幹彦氏

 パイオニア カーOEM事業部 商品企画部 部長の高柳幹彦氏は、中小型ディスプレイの応用機器の代表例であるカー・ナビゲーション機器の最新動向を解説するとともに、カーナビや車載AV機器は今後も進化を続け、車載ディスプレイの市場はさらに大きくなるという考えを示した。高柳氏はカーナビの最新動向として、日本で製品化されている最先端のカーナビを紹介した。将来の自動運転につながるAR(augmented reality)技術を導入したカーナビや、航続距離を伸ばせる運転を支援する電気自動車用のカーナビを取り上げた。また、カーナビのスマートフォン用アプリや車載AV機器の動向についても解説した。

福本雅朗氏
NTTドコモ 先進技術研究所 先端技術研究グループ 主幹研究員の福本雅朗氏

 NTTドコモ 先進技術研究所 先端技術研究グループ 主幹研究員の福本雅朗氏は、“触覚”を利用した新しいユーザー・インタフェース技術について解説し、モノを触る感覚が重要だとする考えを述べた。スマートフォンやタブレット端末の普及と共に、タッチ・パネルによる操作が当たり前になっている。ただ、タッチ・パネルでは直感的な操作は可能だが、キーボードを押したときのような感触がない。また、3Dディスプレイでは、「表示物体がそこにあるように見えるのに、触れない」というジレンマが生じている。このような課題を解決する、タッチ・パネルや3Dディスプレイに触覚を与える技術の研究開発の最新事例を、福本氏は紹介した。