2011年9月5日に中国・北京で開幕した「FPD International CHINA 2011/Beijing Summit」(会期は6日まで)では、中国政府や北京市政府などの挨拶に続き(Tech-On!関連記事1)、台湾、韓国、中国を代表するパネル・メーカー6社からの基調講演が行われた。今後の中国パネル市場の動向を左右する6社からの講演だけに、参加した500人以上の聴講者は熱心に耳を傾けていた。

 台湾AU Optronics(AUO)社 Associate VP of TV Display Product Business Unitの徐万記(Frank Hsu)氏は、AUOの戦略として、原点に戻り顧客の要望に応えることが重要であると繰り返した。顧客は神様であり、顧客が何を求めているのかを考えることが、今後の指針を決めるうえで優先。そのうえで、現在の顧客の関心は環境にあり、環境に貢献するプロダクトの開発に積極的にまい進するという。良い政策の一例として日本のエコポイントを挙げ、ユーザーニーズとマッチしたエコポイントは、日本の経済の活性化に大きく貢献したと自分の考えを述べた。具体的に環境に考慮した取り組みとしては、使用後パネルのリサイクルの仕組み構築や、テレビの外観をなるべくシンプルにし余計な外装などに頼らない製品開発などを挙げた。

 中国Tianma Micro-electronics社 Managing DirectorのLiu Ruilin氏は、中国国内のFPD産業について分析するとともに、今後の展望を述べた。中国のFPD産業は、技術的にハイレベルに近づきつつあるものの、ほとんどの中国企業は赤字が続いているという問題がある。これまでは、年率20~30%で中国のパネル産業は成長してきたが、今は飽和状態。スマートフォンのようなニーズはあるものの、2011年の成長率は4%程度を見込んでいる。ただし、中国企業の優位性も多くあり、例えば中国は大きな市場であることとともに、世界の工場であるという環境を挙げた。多くの海外メーカーが進出してくるため、そのようなメーカーと企業と競争することで、技術力が高まってくる。一方で、FPD産業は国の重要産業なのだから、政府の資源を最大限に活用できるようにしてほしいと述べた。

 韓国LG Display社 VP of Mobile/OLED Product Planning Departmentの金垣(Won Kim)氏は、スマートフォンに代表されるモバイル機器に関して、今後どのようなパネル製品が主流になっていくのかについて考えを述べた。スマートフォンではユーザーが様々な使い方、例えばSNSを使用したり、クラウドサービスなどを使用したりなど、電話だけの使い方では収まらなくなっている。そのうえで充電回数を少なくしたい、セキュリティを確保したいなどの要求が出てきており、これらのニーズに応えられるように、パネルも選択すべき。画質に関しては、現在LGでは96個のパラメータで評価しているという。ただ、やはり重要なのは解像度や色の再現性、輝度などで、輝度は第三者機関に評価してもらっている。また、消費者調査を米国、英国、中国の計270人に実施、IPS方式の液晶パネルと有機ELパネルについて調べたところ、7割の人が液晶パネルを選んだという。

 韓国Samsung Electronics社 Executive Vice Presidentの昔俊亨(Jun H. Souk)氏は、現在、FPD産業は変革点を迎えており、次のイノベーションを起こさなくてはいけない時期だと述べた。これまで、FPD産業は順調に成長してきたものの、激しい価格競争などから利益が出ない産業になってしまっている。ただ、暗い点だけでなく、例えば中国市場は強く成長しているし、有機ELパネルなどの期待される製品も出てきている。顧客は、安価な製品を求めるというだけでなく、例えばテレビでメールが送れたり、指1本で操作できたりなど、ライフスタイルが変化するような機能を期待している。このようなバリューの向上に応えられるように、Samsungでは三つの技術、酸化物半導体TFT、グリーンディスプレイ、インタラクティブディスプレイの開発に力を入れていくという。

 中国Nanjing CEC PANDA LCD Technology社 Vice General Managerの朱立鋒(Zhu Lifeng)氏は、2011年3月末から稼働を開始した第6世代の液晶パネル工場の稼働状況や今後の事業計画などについて述べた。同社は、中国南京市と中国Nanjing China Electronics Panda Group Corp.(CEC Panda社)が設立した液晶事業会社で、第6世代の液晶パネル工場の建設には、シャープからの技術を導入している(Tech-On!関連記事2)。朱氏は、優れた技術を導入し、さらにはそれを中国流にアレンジすることが重要で、例えば今回の工場建設には138億元の投資を見込んでいたが、自らがアレンジすることで金額を下げられたという。現在の工場の生産能力は月産6万枚。最終的には8万枚を目指すが、2011年内には達成できると自信をみせた。また、現在の主力製品は32型の液晶パネルだが、R&Dセンターを設けて新製品の開発も積極的に行っており、大きいものでは37型、65型、小さいものでは22型、19型の液晶パネルを、2012年までに投入したいという。

 中国BOE Technology Group社 COOの王家垣(Wang Jiaheng)氏は、自社の今後の製品計画を中心に講演した。今後、FPD産業の需要を読むのは難しいものの、7~9%で成長すると予測。そのような市場に対して、BOEとしては顧客のニーズを的確に捉えたうえで、様々な製品を投入していく。例えば、テレビに関しては3Dテレビの生産を2012年初めまでには実施する。また、2015年には透明ディスプレイや裸眼式3Dテレビの生産も開始したいとした。モバイル製品に関しては、300dpiの高精細パネルやタッチパネルを一体化したパネルなどを開発中という。また有機ELパネルも2012~2013年には市場に投入したいという。また、同社は製品開発において新しい体制を構築したことを述べた。今までは自社内だけで閉じたクローズな製品開発体制だったものを、他のデジタル機器メーカーと共同で開発する体制とし、よりエンドユーザーの満足を高めるようにしているという。

 基調講演では、これらのパネル・メーカーの他に、東京エレクトロン会長の東哲郎氏、および米Applied Materials社 Corporate Vice President and General Manager of Display Global SalesのID Kang氏が、装置メーカー側からの中国FPD産業に対する期待などを語った。