Broadcom社 Director of Asia-Pacific Business Development、WLAN Business UnitのJeff Baer氏
Broadcom社 Director of Asia-Pacific Business Development、WLAN Business UnitのJeff Baer氏
[画像のクリックで拡大表示]

 スマートフォンやタブレット端末など携帯機器の他、テレビやゲーム機にまで採用が広がる無線LAN(Wi-Fi)。その送受信用ICで、世界トップシェアを誇るのが米Broadcom社である。Apple社のスマートフォンのほか、任天堂の家庭用ゲーム機にチップを供給する同社だが、今後はスマートグリッド分野など白物家電への採用増を目指すという。同社で無線LAN事業を手掛ける、Director of Asia-Pacific Business Development、WLAN Business UnitのJeff Baer氏に、新市場に取り組む狙いを聞いた。


――Broadcom社の無線LAN用送受信IC事業で、現在注力しているのはどのような分野か?

Baer氏 我々の無線LAN事業は、パソコンおよびパソコン周辺の機器から始まった。それが2008年ごろからスマートフォンや電子ブックなどのモビリティ用途に使われるようになり、急激に伸びた。現在では、このモビリティ分野が、弊社の無線LAN事業の中で最大の事業分野となっている。

 2009年ごろからは、これらに加えて、テレビやSTB向けなどの事業領域(Broadcom社は「メディア」と呼ぶ)が始まった。この事業領域は、モビリティなどに比較すると小さいが、急成長を遂げている。


 そして現在勃興しつつある全く新しい事業領域が、白物家電やセンサ・ネット端末などの「Embedded」である。スマートグリッドなど、家庭の節電に向けた各種機器の無線通信用途などが含まれる。我々はこの市場領域に、強く期待している。

 これらの各市場では、それぞれ市場要求が異なっている。例えばスマートフォンなどのモビリティ市場では、2.4GHz帯の電波の相互干渉を低減する技術や、ICおよび周辺回路の実装面積低減、消費電力低減などに厳しい要求がある。一方でテレビなどにおいては、5GHz帯をうまく活用する技術や、遅延時間の低さ、また高いデータ伝送速度やMIMO技術による通信エリア拡大が求められる。そして今後登場するEmbedded市場の要求条件は、これまでの市場と大きく異なる。データ伝送速度は極めて遅くても構わないが、組み込み先のシステムのマイコンが非力であることが多いため、無線LANモジュール側に制御用マイコンを搭載したり、ネットワーク制御を自身で管理したりなど、自己完結性が必要となる。


――無線LANはなぜ今、新たな方向に進化を始めているのか?