2011年8月26日に、文部科学省の科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会に設けられた産学官連携推進委員会(主査は芝浦工業大学の柘植綾夫学長)は第6回委員会を開催し、9月下旬に公表する予定の「科学技術イノベーションに資する産学官連携体制の構築と実行 イノベーション・エコシステムの確立に向けて早急に措置すべき施策(案)」を議論した。

 同委員会はこれまで、イノベーション・エコシステムの推進方策として、大学・公的研究期間などの研究成果を、ベンチャー企業を介して社会に技術移転し、新規市場を創成するイノベーション創出のやり方について議論してきた。議論のポイントは、大学などの研究成果を“価値化”する事業化前工程(プレベンチャー)までは、研究成果情報や人材提供、その工程の資金などを国(行政)が受け持つ一方、その後工程となるベンチャー企業創業以降はベンチャーキャピタル(VC)などの民間資金を活用するとの構想である。ポイントの中核は、プレベンチャーからベンチャー企業創業までの一連の工程をマネジメントする“事業プロモーター”という高度な専門家(スーパーバイザー)を新設配置する構想だ。

 事業プロモーターをどんな組織に所属させるのが最適なのか、その権限などをどうするかを再度議論し、論点を整理した。事業プロモーターに適した人材を確保する具体策と利益相反を防ぐ方法などを一層深く議論した。特に、日本では東京地域には事業プロモーターに適した人材はある程度はいるが、その他の地域となるとあまりいないという、東京と地方の実情の差をよく加味する必要性が議論された。

 これまで同委員会で議論してきたリサーチアドミニストレーターの育成システムなどの議論に移り、大学などで効率的な研究マネジメント体制を確立し、大学の教員・研究者が研究に専念できる環境整備についての具体策を議論した。リサーチアドミニストレーターを大学などの“第三の職種”として常勤雇用した場合と、任期付き雇用とした場合の得失などを議論した。日本でも米国のようにリサーチアドミニストレーターという資格制度を設ける必要性などを議論した。産学連携・地域支援課はリサーチアドミニストレーター制度を大学改革のポイントとして重視している。

 産学連携・地域支援課は、平成24年度の産学官連携系の施策をつくる基となる「科学技術イノベーションに資する産学官連携体制の構築と実行 イノベーション・エコシステムの確立に向けて早急に措置すべき施策(案)」原案を説明し、9月16日開催予定の第7回の同委員会で同施策案をさらに集中論議し、公表する予定を説明した。