NECは,プリント回路基板や半導体パッケージの雑音対策などをテーマにしたプライベート・イベント「ノイズ技術対策セミナー」を東京にある本社で2011年6月29日に開催した。EMI抑制設計支援用EDAツール「DEMITASNX」のユーザーや潜在ユーザーを対象にしたイベントである。

講演する中村氏 Tech\-On!が撮影。スライドはルネサスのデータ。
講演する中村氏
スライドはルネサスのデータ。
[画像のクリックで拡大表示]
抵抗成分を意図的に高めたバイパス・コンデンサの効果 ルネサスのデータ。
抵抗成分を意図的に高めたバイパス・コンデンサの効果
ルネサスのデータ。
[画像のクリックで拡大表示]

 EDAベンダーのプライベート・イベントと言うと,半分以上の講演は,そのベンダーの製品紹介だったりすることが多い。その意味では今回のイベントの構成は異色だった。DEMITASNXの最新機能(Tech-On!関連記事)を紹介する講演や関連会社の製品紹介もあったが,そのほかの講演はエレクトロニクス実装学会の研究会やイベントに近い内容のものだった。

 講演は全部で五つあり,その中には,秋田大学の萓野 良樹氏(大学院工学資源学研究科電気電子工学専攻 助教)や,ルネサス エレクトロニクスの中村 篤氏(生産本部実装・テスト技術統括部システムパッケージ設計部 主管技師),システムデザイン研究所の久保寺 忠氏(代表取締役)の講演が含まれる。筆者のスケジュールの都合で萓野氏の講演は聴講できなかったが(申し訳ない・・・),中村氏と久保寺氏の講演の中から,興味深かった(筆者の独断で,申し訳ないが・・・)内容を紹介する。

チップの微細化で,高ESRのパスコンが重要に

 中村氏の講演タイトルは,「SoC,マイコンへの給電設計について」と地味目だった。が,話を始めると,いつものように止まるところは知らないかのような「熱い」講演だった。同氏の講演の前半の内容はタイトルに近く,ボード-パッケージ-チップの給電系に対するPI(power integrity)がテーマだった。一方後半はEMI雑音がテーマだった。

 前半では,PIの解析では周波数軸でボード-パッケージ-チップの給電系を考えることが大切なことや,給電系の等価回路の作り方,反共振の意味,解析事例などを語った。例えば,反共振とは,給電系に低インピーダンスの電流ループが形成された状態で,チップに電源電流がほとんど流れなくなる。

 この問題は半導体プロセスの微細化の進行で,悪化している。微細化でチップのオン抵抗を低くする必要性が高まり,その結果として,半共振の1/nの周波数で電圧変動が成長しやすくなっているだめだ。チップのオン抵抗を高める代わりに,同氏が推す手段が,抵抗成分を意図的に高めたバイパス・コンデンサ(controlled ESR capacitor)の利用である。これで,ボード-パッケージ-チップの給電系に抵抗が挿入され,電圧変動が成長しにくくなり,反共振周波数でも十分な電源電流を供給できるうようになるという。

 後半では,EMI雑音を抑えることを狙った設計のコツを話した。例えば,低EMI設計の基本は電源デカプリングで,それには3端子コンデンサが効果的だという。またケーブルなど,別の経路がある場合には,その経路への対策が必要だとした。